ジャック・ヴァンスの中短編集。
傑作。表題作の「奇跡なす者たち」とかSFなんだよなぁ。特に最近の、コンピュータRPGのテンプレを使ったファンタジー風小説と比べると、異星人が異星人らしい思考をしているというか、異質で人類の(あるいは西洋文化、現代文化では)理解不能な存在の描写が素晴らしい。
しかし、どの作品も詳細は覚えていないものの読んだ記憶がある。特に「音」は初訳と書いてあるのに読んだ記憶がある。ということはこの本自体を以前に読んだということだろうか。そうかも知れない。まあ、この本で初訳の後にSFマガジンか別の短編集に収録されてそれを読んだという可能性もあるが。
「月の蛾」も異星の文化的に間違ったことをし続ける主人公が哀れというか、共感羞恥というか。「最後の城」もそうだけれど、使命としてやらなければならないこと、と文化的に許容されることが両立しないという状況の困難さがいい。