ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:最初の接触

伊藤典夫翻訳SF傑作選の第二弾。宇宙編。

うーん、こっちの方が俺には厳しいなぁ。そもそも宇宙人にほ乳類とかいう分類が当てはまるだろうか、などと考えてしまうのである。ネタバレ感想。

 

最初の接触

1945年マレイ・ラインスター作。ファーストコンタクトテーマということだが、まあ、その分野が確立する前の作品なので、タイトルもそのまんまである。そしてパズルSFというか、きわめて限定された状況をどう解決するかという話。接触する相手が、地球人とまったく同じ考え方をするというのがどうも俺の好みに反する。地球人というか、欧米人というか、大卒ホワイトカラーっぽいというか、当時のSFファンらしい考え方。そこがパズルになっているので作品として悪い訳ではないが、好みではない。マレイ・ラインスターは以前に「オペレーション外宇宙」が傑作だというので世界SF全集で読んだが、ピンと来なかった。

生存者

1952年ジョン・ウィンダム作。センセーショナルな終わり方の作品。だが、宇宙船でなくても成立する話である。ジョン・ウィンダムは「トリフィドの日」で有名な人だが、そっちもパニック小説という気がする。

コモンタイム

1964年ジェイムズ・ブリッシュ作。超光速航法と時間の関係に関するバカな理論から始まって面白い。バカハードSFっぽさがある。そこから超越存在との出会いという意外な展開。この短編集で唯一のエイリアン的なエイリアンである。よい。ジェイムズ・ブリッシュは昔読んだ宇宙都市シリーズがよかった。0.1%スピンディジーで雨を避けるとか。1%だったかも知れん(記憶があいまい)。

 

 

キャプテンの娘

1953年フィリップ・ホセ・ファーマー作。始めの方からだいたい真相はほのめかされているという気がする。ああ、この寄生体もエイリアンだな、でもこの作品の中では寄生虫扱いなので、知性体ではないようだが。キリスト教原理主義が移住した惑星という設定といい、今日の日本や世界でも十分通用する内容であろう。オチはちょっと安直な気がするが、基本的にはハッピーエンド。それから魚臭い美女というのはちょっと。俺の好きなファーマー作品は階層宇宙シリーズ。たぶん、リバーワールドの方が出来がいいと思うけど、階層宇宙シリーズは日本語訳が途中で止まったので、脳内で傑作扱いになっている。

 

 

宇宙病院

1958年ジェイムズ・ホワイト作。健康な患者とその治療をする異星人医師という訳の分からない組み合わせに協力することになった地球人医師の話。この異星人医師も見た目や性質は変わっているが、考え方は人間的というかある種の人間の考え方を誇張したもの。異星人医師の意図を知り、それを達成するというパズル的なストーリー。患者が恐竜というのが俺の気になるところだが、高度に倫理的な異星人ならそういうことをしてもおかしくないという説得力はある。この作家の他の作品は読んだ記憶にない。

楽園への切符

1952年デーモン・ナイト作。犯罪のないユートピアディストピア)となった地球から脱出する男の話。というか、宇宙への転送装置を発見しながら、ユートピア実現のためにそれを封印するというのは、「永遠の終わり」の発想元かと思ってしまう。ユートピアはテーマではなく、転送装置の番人が全然番人をしていないとか、転送装置で転送された先の話とか、短編にしてはやや雑然としているけれども、面白い。デーモン・ナイトの名前は記憶残っているが、これがデーモン・ナイトの作品だというのが記憶にない。

救いの手

1967年ポール・アンダースン作。地球人類が他の異星人よりも高い科学技術力を持っているという設定。最初の人類の会議の場面が実に高慢で鬱陶しいが、実は文化侵略の話で、異星人側が主体である。この作品だけ少し年代が新しいので、アンダースンが優れた見識なのか、時代の流れなのかは分からない。

まあ、文化侵略というのはSFのテーマというよりもガジェット的な仕組みとも言えて、つまり高度な文明を持った異星人が地球に(あまり)干渉しない理由として、その後多くの作品に影響を与えていると思う。(文化侵略はもともとは西欧文明やキリスト教が他の地域の文化を破壊してしまうという現実の問題である)

アンダースンはだいたい面白いが、タイムパトロールという概念を作ったタイムパトロールとその続編、続編というか別方式の「時の歩廊」などを挙げておきたい。