生涯で一番重要なアニメではないかも知れないが、当時の俺には重要だったし、今でもそれなりに重要なアニメである。
放送時はビデオに録画していたが、それは放送時間に見られないからでテープはすぐに使い回ししていたので、当時は1度、その後もDVDを買ったりはしていないので、配信で1度見たくらい。今回は3周目だと思う。劇場版は映画館で見たけど、そっちは好きではない。
まず、あまり重要でないことを書くと、作中作のゲキガンガーの最終回で、主人公たちが途中で乗り換えた新型のゲキガンガーVのピンチに、旧型のゲキガンガー3が助けに来る。たぶんナデシコの時点でロボットものの王道展開ということだろう。
一方、本編のナデシコの最終回では、艦長のユリカがナデシコを自爆させて遺跡を破壊すると主張するのに対して、全員が大反対。ユリカ1人だけ残って艦を自爆させる予定だが、自分は死なないと主張するものの根拠はないようだ。
(でもルリだけは、オモイカネのために反対したのではないかと俺は邪推してしまうのだが)
そこにウクレレを弾きながらフクベ提督が登場する。かつてナデシコを逃がすために犠牲になって死んだはずだったが、生きていた。
自己犠牲の否定はナデシコのテーマのひとつ。山田さん(ダイゴウジ・ガイ)の死がほとんど意味のない犬死というのも重要だし、お葬式回のトンチキな葬式もそう。
ということで、時期的にはエヴァンゲリオンに対するアンチテーゼと思っていたけど、もっと強く、これまでのロボットものヒーローものに対するアンチテーゼという意味があると思う。
木星蜥蜴の正体、つまり正体不明の敵または異星人だと思っていたら、人類だったというのも重い。それも地球連邦が秘密裏に消そうとしていた元月の植民者が、月を追われ、火星で古代遺跡を見つけたが、遺跡の利権のために追い出されて、その後、木星でさらに価値の高い遺跡(自動工場)を見つけて反撃に出たというもの。
地球側に正義はない。ナデシコは1話か2話あたりから地球連邦と戦ったりしているので、立場は微妙だが。悪いのは地球側じゃないのかってなるところが、個人的にはよい。そんなことは最近のイスラエルとかを出す以前に、ベトナム戦争でアメリカ(と同盟国)が直面した問題なんだけど。
それでいて、作風は明るい。というかふざけているとも言える。そこも俺としては好みである。
星野ルリは、エヴァのレイのパクリとも言われるけど、無口少女ながら結構お茶目なところがあり、艦長選挙という名のミスコンに乱入して歌を歌ったり、ウサギの着ぐるみを着たり、なぜなにナデシコに出演したりしている。無口でお茶目は珍しいぞ。無口でハッカー系としては涼宮ハルカの長門有希の先輩とも言えるし。系列としてはキディ・グレイドのリュミエールが直系の子孫(後藤圭二キャラデ→監督なので)だと思う。リュミエールはそんなに無口じゃないけど、やや辛口なところは似ている。これも好き。
3周目のお気に入りキャラは、操舵士のハルカ・ミナトさん。大人の色気のある女性。前半ではいかついゴートと恋愛関係にあったが、後半では木連の白鳥九十九と恋愛関係になって、物語の重要な役割を果たす。九十九の死後、白鳥ユキナが「お兄ちゃんの遺志を継いでミナトさんのお婿さんになる」と宣言したときも、微笑んで受け入れていた。
ストーリーとしてみると、ナデシコはほとんどの作戦に失敗している。
- 最初の目的は火星に取り残された民間人の救出。これは失敗。というか大失敗。イネスさんだけ回収。
- 地球で地球連邦と共同作戦。これは味方を攻撃してしまう。失敗。
- 地球上で単独で木連自動兵器との戦闘。成功だが、そもそも重要な作戦ではない。
- 月面基地と民間人の保護。民間人への被害は抑えたが、ナデシコ級4番艦シャクヤクを破壊されてしまう。
- 木連との和平交渉。失敗。これまでの流れからして和平で終ると思うだろうが、そう甘くはないのだ。地球連邦も汚いが、木連も汚い。
- ネルガル重工に取り上げられたナデシコの奪還。これは成功。オモイカネの説得?に成功した星野ルリの功績だが、エステバリスの持ち逃げを放置したネルガル重工の甘さも大きい。マスターキーを盗まれたのも。
アニメしか見ていないので解釈違いがあるかもしれないが、ナデシコが最終的に何をしたかというと、火星遺跡の分割によるボソンジャンプの阻止。これで木連の優位を覆し、戦争が膠着状態になることを狙ったと思われる。木連優位では和平交渉は難しいので一旦膠着状態にして、その後の和平を期待するという形だろう。
まったくもって王道に反するというか、熱血は作中作だけでいいという話なのである。
こうゆう作品は唯一無二と言うと、いや他にもあると言われそうだが、かなり珍しいと思う。俺はそこが大好きだけど、これだけ作戦が失敗していて、それなのにキャラは結構明るくふざけているアニメを好きになれない人がいるのは不思議ではない。
もう一つこのアニメの問題点は、メインヒロイン(のはず)のミスマル・ユリカがうざいということである。EDで「私らしく」と歌ってるけど、私らし過ぎる。声優は桑島法子。今では押しも押されもしない実力派声優で俺が名前を覚えている数少ない声優だが、名前を覚えたのはガン×ソードで、そこから調べてミスマル・ユリカ役だったことを知ったのであった。うざい役をうざく演じているのでうまいと思う。なお、艦長はお飾りだというのがナデシコの世界観だが、ユリカはお飾り以上の活躍をしてナデシコを救っている。その判断がまた際どいというか冷酷なこともあってヘイトを買っている気もする。