ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:ノパルガース

ジャック・ヴァンスの中編SF。

日本翻訳版の発行は2009年だけど、書かれたのは古い。1950年代ではないかと訳者の伊藤典夫のあとがきにある。

作品として古いことは間違いない。でもなかなかに面白い。

ジャック・ヴァンス異世界とか異種族の描写に優れた作家だが、それはつまり異なる考え方を示すということでもある。この作品に登場する異星人は、信用できない異星人である。

残酷な異星人と見ることも出来るが、その残酷さは感情を排した理論的な結論からそうなると考えることも出来て、悪役とも言えない。しかし、作者の描写は典型的な悪役異星人っぽいのだ。でも言っていることは正しいという印象も受ける。

というあたりから話が始まって、超生命体ヴァイトン風になったりするが、100ページくらい読んでもどう話が決着するのか全然見えない。その上、派手なアクションもないので、なかなかエンタメとしては弱いところがあるが、不安定な感じが俺には好ましく思えた。

最後まで読むと、ちゃんと話は落ち着いたので、そこは問題ない。ジャック・ヴァンスのファン向けという面は強いものの、SFとしても佳作であろう。さすがに古いという印象は強いけれど。