ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:スペース・オペラ

ジャック・ヴァンス・トレジャリー

全体の半分くらいがスペース・オペラという長編(中編)で、その他に短編がいくつか。

スペース・オペラは、いわゆるスペオペではなく、歌劇のオペラ。金持ちの婦人が地球の素晴らしいオペラを宇宙の異種族に見せてあげようと、オーケストラと歌劇団員を引き連れて旅して回る話だが、異星種族とは当然コミュニケーションが成立しないでドタバタになる。そしてまた性的魅力で男性乗組員を虜にする美人の密航者や船長の秘密なども絡んでくる。とはいえ、ドタバタというにはややドタバタが足りない気がする。タイトル落ち。

新しい元首は、実験小説的とも言える方法で複数の物語を束ねつつ最後は強烈に落とすという傑作。複数の物語の話ではハイペリオンは長すぎる。これは物語の面白いところだけを取り出して束ねているので、ハイペリオンのあるべき姿とも言える。

悪魔のいる惑星は、複数の太陽が予測できない時に昇ったり沈んだりするというまるで三体のような話。地動説ではあり得ないと思うが、そんなことは関係なく、異星種族と地球人(キリスト教徒)の考え方の対立が描かれる。

海への贈り物は、異星の種族を地球人による搾取から守るというような割とモラルのある話。確かに、海への贈り物であり、他のSF作家ならこの話の終わったところから長編を書き始めるかも知れない。

エルンの海は、みにくいアヒルの子のような話。同族をふつうに食ってしまったりするのでヴァンスらしい。

表題作以外はみな素晴らしいという感想である。表題作も駄作というわけではなく、ふつうかなと。