これは素晴らしい。藻類についての本だが、副題の「藻類から見る生物進化・地球・環境」という通り、単に藻類についてのエピソード的な本ではなく、進化とくに酸素発生型光合成生物の進化についての本であり、それゆえに地球と環境についての本でもある。
進化については、まあ素人ながらそこそこに勉強して、「進化論ほど誤解されている理論はない」というくらいの私であるが、もちろん、こういうちゃんとした本を読むと知らないことがたくさん書かれている。それがすごく面白い。
特に興味深いのは「植物化」、従属栄養生物が植物を取り込んで独立栄養生物になるという過程である。それが何度も独立に起こっていて、原核生物を取り込んだ葉緑体だけでなく、葉緑体を持った真核生物を取り込むとか、植物化だけでもいろいろな過程があって、捕食とか共生とか簡単には言えないものがある。むちゃくちゃ面白いよ。草食化とか女体化どころじゃないよ。
CO2の固定でも円石藻などが骨格として炭酸カルシウムを作っている。これは有機物炭素ではないので簡単には環境中に放出されない。ところが円石藻が炭酸カルシウムを作る過程で2個(mol)の重炭酸イオンから1個(mol)の炭酸カルシウムと1個(mol)の二酸化炭素をが発生するのである。重炭酸イオンは空気中の二酸化炭素が水に溶けたものだから、二酸化炭素が2個から1個になるとも考えられるが、円石藻が消費した重炭酸イオンのためにCO2が空中から補給されるかというとそれは明白ではない。しかし、円石藻に限らず藻類の二酸化炭素固定能力は十分高い(そして海の面積は広い)ので、地球全体で見たときには藻類による二酸化炭素固定の重要性は十分高い。
また、これとは別の話で面白かったのは「地上は緑だが、海は赤い。それはなぜか」というまだ解明されていない謎である。そうそう海は赤いよね、俺もアニメで見た。
今や専門家だけでなく、居酒屋のおっさんやマックの女子高生も地球環境問題を論じる時代である。この本は地球環境問題を論じる上で最低限の知識を与えてくれるだろう。学校を休んでもこの本の内容をマスターすれば、地球環境についていっぱしのことを言う資格があるだろう。1人1冊づつ手元に置いておこう。
私は図書館で借りたので返さなければならないが。なお私が読んだのは第2版である。