ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:化学受容の科学

読み終わってないのだが、次の予約が入っているので図書館に返さなければならない。6章まで読んだ。

生物が化学物質を認識する仕組みについての本。大学生か院生あたりが対象というか、最新の研究成果を網羅的にまとめた本かも。

主に昆虫から人間まで、というか昆虫とネズミと人間が主な対象。匂いの受容体は人間(というか霊長類)ではかなり失われている。まさに退化(喪失的な進化)の途中にあるので、人間の匂いの受容体の遺伝子は個人差が大きいようだ。匂いに敏感かどうかというだけでなく、どの匂いを感じるかというのがもう個人差があるということだな。

昆虫はフェロモンの話で、性フェロモンも雌が主にフェロモンを出す場合でも雄もフェロモンを出して交尾行動に移るみたいなことが、フェロモンの化学物質の特定と、その受容体蛋白質、受容体遺伝子の特定ということと絡めて語られている。

ここで遺伝子の特定には、in silico という用語が出てきた。

in silico - Wikipedia

in vivo, in vitro に対して、コンピュータで計算して求めるという意味のようだ。解析済みの全ゲノム情報から、求めるような形の蛋白質を合成するような遺伝子を検索するという手法のようである。これがこの本の分野では広く用いられている。

また、味覚についても記述されている。舌の部分によって感じる味覚が違うというのは、よく言われていることだが、受容体遺伝子の発現という点では、舌全体に発現していて、部位に偏りはないそうだ。

鯨の仲間は、匂いの受容体がないそうだ。遺伝子が失われているのだ。

化学物質過敏症」というのが最近話題になったりするが、名前が変だという気が少ししていた。この本を読んだ感じでは「化学物質受容神経系過敏症」の略と考えればもっともらしい気がする。特に匂いの受容体は個人差が大きいことを考えると、他人の不快に気付かないということも納得がいく。不快と感じるかどうかではなく、その化学物質を匂いとして感じるかという点に既に個人差があるのだ。