図書館で借りた本。1977年発行の古い本である。
量子論をもう少し分かりたいと以前から思っていたのだが、やはり基本的に難しいので、それじゃあ歴史の方を勉強してみようということで読んでみたのである。
なお、この本も数式がたくさん出てきて十分難しい本である。
でもいろいろと面白かった。特に、この本のほとんどは光子と電子の関係なのがよい。最後の14章で陽電子やら中性子やらニュートリノやらがぞろぞろと出てくるが、それまでは基本的に電子の話で、陽子は存在を認めながらもほとんど絡んでこない。
この本のメインの流れとは関係ないけれど、ナチス政権になって反量子論・反相対論の立場のヨハネス・シュタルクが国立理工学研究所の総裁になったというのが結構重要だったのだなと。そんなんじゃとても原爆は作れない。
さらにこの本とは関係ないけど、俺はちょっとSFのネタとして、「量子論は発展したが(特殊)相対性理論は発見されなかったので、原爆や原発はないが石油化学製品や半導体はある世界」というのを考えたことがある。しかし、この本でも分かるように、量子論には(特殊)相対性理論が必要なので、そういう世界はあり得ないようだ。
量子論の入門書では名前しか出てこないハイゼンベルクの行列力学が、この本では結構重要な役割を果たしている。そして、入門書では重要な位置づけのハイゼンベルクの不確定性原理が出てくるのはこの本の後ろの方の11章というのも興味深いことであった。もちろんシュレーディンガーの波動方程式も重要であるが。
また、量子論の形成過程で「エネルギー保存の法則は量子論では成り立たないのではないか?」という疑問が出ているのも歴史的に面白い。現代ではエネルギー保存の法則は絶対視されているようだが、量子論の形成過程においては、その法則にも疑問を付けるということもあったようだ。これはプランク秒内の話ではなく、β崩壊などの放射性の物質のエネルギーの問題として。
そして俺が前から疑問に思っていた、光の散乱の問題は量子論的にはどう説明されるのかということも、どうやら分子を構成する複数の電子と光子との量子多体問題ということのようだ。というか、散乱だけじゃなくて光の反射なんかもみんなそうみたい。
ともあれ、歴史的に見ているという点と、主に光子と電子が対象である点で、これまでに読んだ量子論の本とはかなり違っていて面白かった。