図書館で借りた本。2014年発行。
なかなか面白かった。
アルキメデスの「方法」の書かれた羊皮紙が発見されたり、失われたり、再発見されたりした物語と、そこに書かれている内容、そしてアルキメデスが時代的にどう優れていたのかということと、それでもその後の微積分の考えには至らなかった限界というか、過剰評価もあるという話など。
図形の面積や体積を求める話なので、数式はあるけれど、高校生程度の知識があれば理解できる本である。微積分を知らなくても大丈夫。
主に二次曲線を直線で区切った図形の面積、および二次曲線を回転して出来る図形を平面で切った形の体積を求める方法についての話。
その面積や体積がある値になるということの証明としての二重帰謬法という方法があり、これはアルキメデス以前から知られていたが、アルキメデスが改良し、一般化した。それは微積分にも繋がるような一般化であった。
ここでこの方法を使うには無限数列の和の公式を使うのだが、ギリシャ時代の数学者にとって数と面積や体積は別のものであり、無限数列の和と面積の和の極限はそのままでは同一視出来ないということのようだ。この壁をアルキメデスは乗り越えたように見えるところもあるが、別の図形の面積や体積を求める時には乗り越えていないようにも見える。という話が面白い。
更に、「方法」のメインは仮想天秤とかいう方法で重心(や体積)を求めるという点である。これは数学的には疑問がある方法だとアルキメデス自身も理解していて、この方法で例えば体積の値を求めておいて、その後に先の二重帰謬法でその値が正しい体積であることを証明するのである。
これはいわば、タネあかしであり、厳密な証明だけからは分からない思考過程が分かるので、その後の数学の発展に大きな影響を与えてもおかしくはないと思うが、どうもその重要性はその時代には理解されなかったようで、せっかくのタネあかしも利用されなかったようだ。
そしてこの厳密ではない方法を使わなくても、数列の和を使うことによって解ける問題で、アルキメデスがこの方法を使っていることから、数列の和と面積や体積の違いを乗り越えていなかったように思えるということらしい。