図書館で借りた本。
40年ぶりのポーの一族ということで、読むのを躊躇っていた作品。というのも、間を開けた名作の続編というと、ゲド戦記があるのだが、ゲド戦記はそれまでの作品とかなり傾向が違っていたからである。
でも「春の夢」はいつものポーの一族だった。もちろんカバー裏にも書いてあるように新しい点もあるのだが、これまでとガラッと変わってしまったという訳ではない。特にアランはいつものアランであった。
新しい要素についても、「吸血鬼が霧になる」という比較的よく知られた概念の発展系とも言えるし、初期のポーの一族で欄外に書かれていた「吸血鬼が死ぬ時に新品のパンツを履いていたら」という考察の発展系でもあると考えると、違和感なく受け入れられるものである。
また別の一族も登場したが、これもSF的には十分妥当だと思われる。吸血鬼の由来がなんであれ、類似する別の一族が存在することはむしろ必然とも言える。
ストーリーは、第二次世界大戦中にドイツからイギリスに逃れてきたユダヤ人の姉弟が敵性国民として疎まれるという背景の中で、美しい少女を巡る話であり、ポーの一族らしいというか萩尾望都らしいよい話であった。