まえがき
東下りから、伊勢物語の最初に戻るためのつなぎの部分、(伊勢物語には)元ネタなしの言い訳のような話。
本編
異世界の都に行くつもりが間違って、千葉県(下房)に来てしまったのであった。
しかし、そこでご都合主義的な都合よさで、ちょうど任期が終って都に帰る貴族に会うことが出来た。この貴族にとっておきの宝物である真珠を見せて、これを偉い人に献上したいと申し出た。
どの時代でも宝石として価値がありで、現代では安くなっているものと言ったら真珠でしょ。銀も安くなってるけど。現代から異世界に持って行くなら真珠が一番。現代便利アイテムは貴族にはあまり価値がない。面倒なことでも使用人にやらせればいいので。
そして大粒の真球真珠なら、最高権力者に献上するのが、貴族にとって有効な使い方のはずである。
そこに介入して自己の利益とするために、真珠を発見した物語をでっち上げた。浦島太郎をパクって、亀を助けたらその亀が真珠を持ってきてくれたという話にしたのである。
その結果、天皇に献上する真珠の、そのおまけの発見物語の証人みたいな形で貴族と共に都に行くことになったわけだ。これは船の旅だったので楽だった。もう歩き疲れていたので。
京の都に着いたが、すぐに天皇に会う訳もなく、まずは権力を持っている貴族にとりなしてもらうのである。その一族の中の下の方の地位の人に会って、真珠発見の作り話を繰り返し、もう少し上の立場の人に会ってまた話を繰り返した。
最後に一族の中でたぶん一番えらいという人に会って、また話を繰り返した時に、ふと和歌が浮かんだ。
白珠は人に知らえず知らずともよし知らずとも我れし知れらば知らずともよし
真珠の価値は海の底にあって、人に知られなくても変わらないものです。人に知られなくても自分さえ知っていればよいのです。
とは言っても、この真珠もこうして人に知られてこそ天皇に献上することもできるのですから、私も貴族社会に加わってこの才能を生かしたいと思います。つまり、貴族に加えて下さい。
さすがに貴族社会の上位に位置するだけあって、そのえらい人は歌にこめた意味と歌の才能(チート能力だが)を理解してくれた。
真珠発見物語は、もちろん嘘だと見抜いたのだろう。単に亀の恩返しの話ではなくて、亀は仏の化身ということにした方がよいと話の修正を要求してきた。そして真珠は、かつて天皇の祖先が持っていたが海に落としてなくしたということにする。それを天皇に返すのが仏の望みである。そういう話になった。