昔、現代日本からこの世界に転移してきたおたく男がいた。
他人の娘を盗んで武蔵野まで連れて逃げてきたが、娘を盗むのは泥棒なので、武蔵の国の警察に捕まった。が、逃げ出して野原の茂みの中に隠れていた。
などという根も葉もない噂がまことしやかに伝わっているが、そんなことはないのである。
京の都に帰ると心に決めたので、その前に田舎で恋のアバンチュールを楽しもうと、山菜摘みに行きましょうなどと言って、かわいい女の子を誘って野原に行っただけなのだ。草が伸びて人目もないので、ちょっとイケナイことをしていたところ、野焼きの煙が迫って来てとても慌てた時に作った歌である。
武蔵野はけふはな焼きそ若草のつまもこもれり我もこもれり
武蔵野は今日は焼かないでおくれ、若草のような私のかわいい女の子が中に隠れていますし、私も隠れて二人でイケナイことをしています。