ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:世界の民話 アフリカ よりロバ頭のムハメッド

図書館で借りた本。

面白かった話だけ、あらすじとか。

 

 

カビール:ロバ頭のムハメッド

これは変な話だ。

昔、アゲリッド(王、首長、村のお偉方)がいた。アゲリッドには三人の息子と一人の娘がいた。娘は「縫っていなくてひとりでに踊るズボン」をねだったが、アゲリッドは手に入れられなかった。娘は悲しんで病気になってしまう。ウーアルセン(怪物、巨人)がそのズボンを持っているという。父親はウーアルセンにそのズボンを欲しいというが、ウーアルセンは代りに娘を妻にしたいと言う。父親は了承し、そのズボンを手に入れる。娘は元気になる。やがてウーアルセンが娘をもらいにやってきて娘はもらわれていく。

歳月が流れて三人の息子たち(娘の弟)が大きくなると、セトゥート(老婆、魔法使い)がやってきて、「お前たちがあの時一人前の男だったらお姉さんはウーアルセンに奪われなかったろうに」と言う。

どうもこのセトゥートというのは、意地悪な婆さんという存在のようだ。言わなくてもいいことを言って事態を悪化させる役割。

三人はウーアルセンから姉を取り戻すために一緒に旅に出る。そして三人は途中で四つの難関に出会うが、それをひとつも乗り越えられずにウーアルセンの家に着く。

どういうことだよ。

最初は羊飼いに会って雄羊を持ち上げろと言われる。ウーアルセンは雄羊と戦って互角だから、雄羊を持ち上げられなければウーアルセンには勝てないと。しかし、三人は雄羊に遠くに飛ばされてしまう。こんな風にして、三人は雄牛、雄鶏と負け続ける。最後の難関は大食いだがこれも失敗する。

「ウーアルセンはあなたたちを全滅させてしまうでしょう」と最後にウーアルセンの女中に忠告されたにもかかわらず、「それでも行ってみるよ」と三人はウーアルセンの家に行くのであった。

三人は知恵でウーアルセンを騙そうとするが、結局は三人とも井戸に投げ込まれてしまう。

三人の息子が帰ってこないので、父親と母親がラバを連れて探しに出かける。

暑い砂漠で母親は喉が渇き、父親が水を探しに行く。父親が帰ってくる前に、ラバが小便をして、喉の渇いていた母親がそれを飲んでしまう。たちまち母親のお腹が大きくなったので、二人は家に帰ることにするが、帰り着く前に母親は男の子を産む。男の子は体は人間で頭はラバだった。そこで父親はムハメッド・アッサードゥン(ラバの頭)と名付ける。

ここでようやく主人公が登場したのである。

ムハメッド・アッサードゥンはすごい勢いで食事をしてたちまち成長するが、あまり大量の食事をするので父親はもう養えなくなってしまう。また馬に乗ると馬を乗り潰してしまい、これも父親の馬を99頭乗り潰してしまう。最後にムハメッド・アッサードゥンと同じ日に生まれた馬なら乗れると予言されて、その馬に乗る。

そしてムハメッド・アッサードゥンは姉と兄たち救うためにウーアルセンの所に向かって旅立つ。以前に兄たちが乗り越えられなかった困難を易々と乗り越えてムハメッド・アッサードゥンはウーアルセンの家に到着する。

ムハメッド・アッサードゥンはウーアルセンと競争をして勝ち、最後に決闘をすることになる。決闘の立会人として井戸の中から兄弟たちが出される。ムハメッド・アッサードゥンは決闘に勝ち、ウーアルセンの頭を切り落とす。

姉も含めて兄弟たちはウーアルセンの持っていた宝を奪って家に帰る。

めでたしめでたし……ではなくて、ムハメッド・アッサードゥンは以前に食事と馬を乗り潰した分の弁償として宝を両親に渡すが、食事の量が減った訳ではないので、ここでは食べていけないと旅に出るのであった。

ムハメッド・アッサードゥンは下唇で川をせき止めている唇男と出会い、家来にする。次に片方の耳を体にかけ、もう片方の耳を体の下に敷いて寝ている耳男と出会い、これも家来にする。次に髭の中に羊の群れを飼っている髭男と出会い、これも家来にする。

やがて一行はルアクシュ(野獣、怪物)が支配する巨大な森に到着した。ルアクシュは地下に住んでいたが、一行が到着したときは出かけていて留守だった。

ムハメッド・アッサードゥンはそこを住み処にすることにして、毎日一人が留守番をして残りの三人が狩りに出かけることにした。

唇男が留守をして料理を作っているところにルアクシュが帰ってきて、お前を食おうか、料理を食おうかというので、唇男は料理を差し出した。ムハメッド・アッサードゥンたちが帰ってきた時に、唇男は少しだけ残った料理をかき集めて、料理の仕方を知らないので(少ししか作れなかった)と言った。

耳男が留守番をしている時も、同じようになった。髭男も同じになった。

今度はムハメッド・アッサードゥンが留守をしていると、ルアクシュが帰ってきた。二人は戦ってムハメッド・アッサードゥンが勝ち、ルアクシュの頭を切り落とした。そしてその頭を水瓶の下に放り込んだ。(水瓶の中ではないようだ)

三人の家来が帰ってきて、今度はみんなでたっぷりと料理を食べた。食べ終るとムハメッド・アッサードゥンは唇男に水瓶から水を汲んできてくれと頼んだ。唇男は水瓶の下にあるルアクシュの頭に驚いて水を汲めず、石につまずいたと言った。次に耳男に頼んだが、同じようになり同じ言い訳をした。髭男も同様であった。

ムハメッド・アッサードゥンは自分で水を汲むと言って、水瓶とルアクシュの頭を持って戻ってくると、みんなの真ん中にルアクシュの頭を放り出した。

「お前たちは俺の仲間じゃない」と言ってムハメッド・アッサードゥンは三人の家来と別れて一人で旅を続けた。

おしまい。

なにこれ、変だよ。

主役の登場が遅いし、最後もなんかしまりがない。

三人の家来は、全然活躍していない。家来になるためのエピソードみたいのもほとんどないし、単に変な人が登場しただけ。むしろ、三人が同じ失敗を繰り返すというところが面白いのだろう。そしてムハメッド・アッサードゥンはうまくやるというパターンなのだと思う。

前半の兄弟たちが難関を乗り越えられないというのも、同じような失敗を繰り返し、あとからムハメッド・アッサードゥンがうまくやりとげるというパターンだったのだ。

ここで私が食事とか料理と書いたのは、本文ではクスクスと書かれていたもの。ベルベル人の主食で麦の粗びきの粉を蒸した一種のかゆという注釈があった。

そしてムハメッド・アッサードゥンのムハメッドは、イスラム教とは関係なく、独自の名前なのだと思う。ムハメッド・アッサードゥン(ラバの頭)と本文にも書いてあったけど、「アッサードゥン」が「ラバの頭」なのか、「ムハメッド・アッサードゥン」で「ラバの頭」なのかは判別出来なかった。

一種の動物婚の話のようだが、らば自体が雑種強勢なので、ムハメッド・アッサードゥンもどちらの親よりも強い子になったという話かも知れない。ムハメッド・アッサードゥンのお相手となる女性が登場しないのも一代雑種ということを表しているのかも(深読みか)。

ムハメッド・アッサードゥンの話だけで長くなったので、他の話は別のネタにする。