図書館で借りた本。
サブタイトルは「東洋の至宝を欧米に売った美術商」なのだが、これは釣り。そしてその釣りにまんまと引っかかって手に取った俺であった。
しかし実に面白かった。
ひとつは、この本のテーマとは関係ないが、日本にとって海外で開かれる万博は日本の商品を売り込むための展示場という意味が大きかったらしいと知れたことだ。輸出のためには海外で開かれる万博こそ重要なのだよ。
もちろん、メインテーマである美術商の山中商会の急速な発展も面白い。ニューヨークの五番街の一等地に店を構え、日本の古美術を売りまくり、そこから中国美術に転換して更に売りまくるという成功物語。オークションで高額美術品を落札したけど、売れなかったという話もあって、ビジネスものとして面白い。俺は美術には詳しくなく、「ギャラリー・フェイク」を読んだ程度だが、それでもかなり楽しめた。
そして戦争が始まり、ジタバタする余地もなく、敵国資産管理人局によって資産が押収され売却される。戦争と企業というと軍需産業が儲けるみたいな話になるが、それ以外の企業にとっては当然負の影響が大きく、特に敵国で商売している企業には大問題なわけだ。
この敵国資産管理人というアメリカの制度もなかなかえげつないが、興味深いものでもある。
またこの本は注釈や参考文献が充実していて素晴らしい。
そして釣りのサブタイトル「東洋の至宝を欧米に売った美術商」については、作者のあとがきでも、美術品売買は文化交流であって、悪いことではないというようなことが書かれている。略奪するのは問題だけれど、正当な取引なら問題ない。いや、山中商会も中国の美術品についてはやや怪しいところもあるのだが。