ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

アニメ感想:リーマンズクラブ

2022年冬アニメだったようだが、当時は見ていなくて、dアニメストアで見放題配信になったので見た。

実業団バドミントンの話。

エンタメにはフィクション性とリアリティというひとつの軸があって、この作品は実業団ということもあってリアリティが高いように見えるが、ストーリーとしてはそんなにリアリティが高くなくてフィクションが強い。でもリアリティも追求しているので地味である。

またスポーツにはプレイするスポーツという楽しみと、観るスポーツという楽しみがあるが、もちろん主人公が選手なのでプレイするスポーツとしての観点を俺は期待してしまう。一方、現実のバドミントンなどのスポーツでは観ると言ってもカメラアングルとかの制限があるのに対して、アニメでは作画や3Dが大変ではあるが、カメラアングルの制限なしにプレイを描写出来るという利点がある。この作品はそちらに力を入れていて、バドミントンの試合のシーンは見ごたえがある

 

animestore.docomo.ne.jp

 

俺は、最近でこそボウリングを始めたが、スポーツ全般に疎い。逆に、知らない分だけ、知りたいという好奇心があるとも言える。

バドミントンについて俺が知りたいのはサーブである。サーブのあるほとんどのスポーツにおいて、サーブは有利な点であり、多くの主人公が強烈なサーブを打つ(と思う)。しかし、バドミントンでは、サーブに強い制限がかかっていて、強烈なサーブを打っているようには見えない。このアニメでもサーブが強いようには見えない。その一方で、先手を取れるという点でサーブは重要なポイントであるように俺には思える。コースとかいろいろ考えてサーブを打っているはずなのだが、このアニメではそういうところは描写されない。サーブの作戦を描写したら、バドミントンらしさが出ていいと思うんだけどなぁ。

この作品はフィクション性が高い作品であり、サラリーマンとしての描写でも、納豆コーラが既に商品として存在し、さらにネギジンジャーという飲み物を企画開発したりしている。俺はこういう馬鹿らしさは好きである。ところが、サラリーマンとしても下衆な上役や取引先という変にリアルな部分が面白くない。いや、強調されているからリアルじゃないんだけど、そういう上役や取引先は百万回見たというのが俺の感想である。なんか最近の若い視聴者も下衆な敵役は好まないと聞いたような聞かないような気がするが、ワンパターンという以上の鬱陶しさがあるのではないだろうか。

ネタバレだけど、フィクション性とリアリティで悩ましいのはネットインである。ネットのあるスポーツではネットインはラッキーなのだが、これを狙ってやるのはフィクションならではであろう。その割に地味だ。ネットインを必殺技にするというのは、思い出せないがたぶん卓球漫画で見たような気がする。ネットインはリアルに存在するし、リアルでは得点に結びついているけど、狙ってやるのはリスクが多すぎると俺は思うのである。失敗すれば確実に失点するのに、成功しても必ず得点になるとは限らないわけだし。リアリティを重視するなら、見事なドロップショットの方がいい。逆にフィクションという点をうまく使えば、ふつうのスマッシュでも派手なエフェクトを付けるだけで必殺技になる。

そもそもスポーツもののエンタメでリアリティを重視すると、格上の相手には勝てないという現実をどうするのかという問題がある。正当な対策はこちらの格を上げる。つまり、肉体を鍛え、技術を身につけ、作戦を練るということだ。これは短期間では出来ないが、昭和のスポ根アニメなら特訓回を1回入れれば肉体と技術が向上できた。特訓はフィクションだが、肉体と技術を向上させて格上の相手に勝つというのはリアルである。

このアニメではどうして格上の相手に勝てたのか、それは敵の失敗がメインだと思う。最終話では癖を見抜いたのが勝因みたいになっているが、1話だと癖を見抜くというよりも未来予知の超能力みたいな描かれ方であった。バドミントンのスマッシュは目茶苦茶速いので、癖を見てから反応しても間に合わないのではないか。そもそもトップ選手にそんなあからさまな欠点があるだろうかと思ってしまうのである。

ここで思い出すのが、ベイビーステップというテニス漫画(アニメ)である。主人公の丸尾英一郎がやはり目がよくて相手選手の癖を見抜く力があるが、それだけでは勝てない。せいぜい一歩早く動き始めることが出来るくらいだし、相手も撃つ直前にコースを変えるなどの対策をしてくる。丸尾英一郎はコース予測もするけど、過去の統計から確率的に予測しているだけで、外れることも多い。

もっとも俺の好みとしての、自己犠牲が嫌いというのが、このアニメの評価を低くしている。怪我をしても試合を続けるというのは、昭和のど根性スポ根アニメ(重複表現だ)のようである。もうひとつ嫌いな点は、トラウマ克服で弱点が消えるというところ。いやいや、その弱点は致命的なので、それまで選手をしていられたのが不思議である。ここでふとトラウマって何と思ってググったら、21世紀になってからは、その理論全体が完全に否定されたジークムント・フロイトの説ではないか。せめてイップスならよかったが、イップスの治療はトラウマ克服と違って簡単にはいかないのだ(トラウマはフィクション、イップスはリアルだから)。

更に脱線すると、巨人の星というスポ根アニメの代表作がある。巨人の星では、大リーグボール養成ギブスによる肉体の強化、大リーグボールを投げるための特訓で技術を向上、ライバル選手の1号、2号、3号に対する対策と、フィクション要素は強いものの、肉体と技術と作戦が重視されている。トラウマ克服で弱点も克服というのは、極めて安直であり、またスポーツものである必要がない。