ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:楽園とは探偵の不在なり

元ネタの「地獄とは神の不在なり」が好きなのと、人気だというので読んでみた。元ネタにははるか遠く及ばないけれど、それは俺の元ネタ評価が異常に高いからで作者の責任ではない。

こういうの新本格と呼ぶのか変格と呼ぶのか知らんけど、非現実的な設定を入れてそのルールの中で事件を解決するタイプのミステリである。俺はいつもルールの詳細が十分示されていないっていう気がするんだけど、この作品では謎を解くためのルールは完全に示されている。

その意味では、不可能なはずの(いや不可能でもないけど)殺人が起こったことを探偵がうまく推理していると思う。ネタバレでないと思うが「二人殺すと殺した人は天使によって地獄に引き摺り込まれる」というルールのもとで連続殺人が起こるという話だが、それだけなら十分可能であり、本来不可能というためには、そのルールの下で同一犯人による三人以上の連続殺人が起こるという話でなければらならない。そしてこれはそういう話になっていると思う。

ミステリとしてよく出来ている。がずるいとも思う。それは同一犯人による三人以上の連続殺人という点が明記されていないから。いや、探偵がそれを突き止めるのは最後なんで仕方がないと言えば仕方がないけど、それを前提に読むのとそうでないのとでは読者の心構えが違うではないか。だから、ここはネタバレと言われようとも強調しておきたい。

「二人殺すと殺した人は即座に天使によって地獄に引き摺り込まれる」というルールのもとで同一犯人による時間を開けた三人以上の連続殺人が起こる話である。

一度に何人も殺すなら三人以上でも殺せるというのは作中でも示されている。爆弾とかね。時限爆弾でも出来るか。でも爆弾じゃないけど。

でもテーマというか、正義がどうのこうの言うのはあまり好きではない。まあ、テーマだから仕方がないか。元ネタが俺には印象が強すぎるのでそのせいもある。

あと、死刑があるから、天使による地獄へ引き込みがあるから、(二人目以後の)殺人がなくなるというのは、死刑肯定派的だが、それはこの作者だけではなく、全員ではないにしてもミステリ界に多そうな考えだと、死刑否定派の俺は思うのであった。

 

元ネタも勧めておくか。