図書館で借りた、藤堂明保先生の「中国名言集 上」の目次の最初の項目。中国名言集というタイトルだが、かなり藤堂明保先生の意見が表れていると思う。
だいたい俺は人に「先生」などと付けないのだが、例外的に先生と呼ぶ人はいる。そしてこの本を読んだ瞬間に藤堂明保先生と呼ぶことに決めたのである。別にNHKの中国語講座を視聴していた訳ではない。
そして全部読み終わってから感想をまとめて書くのはもったいないので、一項目ずつ感想を書いて行こうかと思ったのである。
「文字あらわれて鬼すすり泣く」の節では、詩経の玄鳥という詩から、殷の国の始まりの伝説を紹介し、そこから書経に記された遷都の話になり、列子から「文字が作られたとき、鬼(人だま)が忍び泣く声が聞こえた」というように続く。
文字は支配の道具である。
藤堂明保先生は中国語学者であり漢字に詳しいと言えるだろう。しかしながら、文字というものが権力側の使う支配の道具であるという批判的な態度を示しているわけだ。知らないで批判することはよくないというが、よく知っているものを批判することは難しい。
よく知っている物に対して、批判的な姿勢を持てる人はなかなか少ないと思うのである。
私も文明批判的な立場なので、大いに藤堂明保先生に同意する次第である。
この本、中国名言集は、俺にとっては十年に一度巡り合うかどうかという大傑作というか、ある意味では奇書かもしれない。中国の思想だと受け取らずに、藤堂明保先生の思想が表れている本だと思うようにしようと思う。