図書館で借りた本。
サブタイトルは「自然に潜む数学の真理」だが、作者の掲げるキーワードは「円から楕円へ」である。
たいへん面白く読めた。
第1章は「曲線を見る、そして何を知る」
デカルトの方法序説は有名だが、序説は序説であり、その先の為の準備である。序説に続くのが「幾何学」である。現代使われている代数の記法の多くはデカルト由来である。またこの本のコラムではデカルトによる代数の幾何的解法も書かれている。これは数学科の大学生がオマケ的に習う「角の三等分の不可能性の証明」の前提となる「作図と四則演算の対応」である。
第2章は「円と円周率」
第3章と第4章が惑星軌道の話。3章がコペルニクスで4章がケプラー。コペルニクスとケプラーに共通するのはデータの尊重ということらしい。コペルニクスは天動説から地動説という理念の変換が注目されるが、惑星軌道のデータを細かく見た上での地動説というのが俺には新しかった。もちろん天動説でもどんどん周転円を増やして行けば誤差の説明は出来るのだが、観測データを素直に解釈すれば地動説になるということらしい。ここは結構詳しい説明がある。コペルニクスが地動説を作り上げて行く過程が分かる。一方、コペルニクスは宇宙の調和という考えに捕らわれていて惑星の数と正多面体の数の関係などを信じていたようだ。
ケプラーがティコ・ブラーエの膨大なデータを元にケプラーの法則を発見したことは有名である。単に膨大なだけでなく、精密であったということが重要で、誤差が角度1分以内であるとケプラーは確信していたということだ。そこから惑星軌道が円ではなく楕円であるという結論になる。これもデータを尊重して理論を修正したということである。
第5章は「等時性と曲線」
振り子の等時性は有名だが、振り幅が大きくなると成立しない。ホイヘンスは等時性が成り立つ曲線と、その曲線に基づく振り子時計を設計した。その曲線がサイクロイド。ホイヘンス有能だな。さらに、円錐振り子、つまりぐるぐる回る振り子についても等時性を満たすための曲線とその曲線になるようにするための仕組みを見つけた。
この辺は楕円と関係ないようだが、実は楕円曲線と関係がある。
第6章は「困難を極めた曲線の周長問題」
難しいですね。円以外の曲線の周長は極めて難しい問題だった。今では微分積分を使って求めることが出来るが、簡単な関数の形に表すことは出来ないという。ただし、サイクロイドについては、周長が求まる。振り子の問題としてサイクロイドが考えられたことから、びっくりするほど簡単に周長が求まってしまうのだ。
そしてこの曲線の周長を求める積分が、楕円積分と呼ばれるものである。
第7章は「円とピタゴラスの定理」
これは次の章へのつなぎの意味が大きい。
第8章は「楕円曲線からフェルマーの最終定理へ」
ワイルズによるフェルマーの最終定理の解決に至る道筋。さすがに細かいところまでは書かれていなくて概略である。
というわけで、「円から楕円へ」というキーワードは見事に内容に則している。