図書館で借りた本。
確かループ物で検索して引っかかったミステリ。
表紙裏には「館」「密室」「タイムループ」の三重奏本格ミステリと書いてある。
まあ、三つ入っていることは確かだ。
さて、この作品は一人称で語られている。ミステリの読者なら信用できない語り手や叙述トリックを疑うものである。一方、ラノベの読者にとって一人称はむしろ一般的な叙述方法になっている。一人称でしか書けない作者問題というのは、なろう系以前のラノベの時から言われていたが、なろう系でも引き続き発生している。いや、一人称が問題なのではなく、本格ミステリの場合には、一人称だと叙述を疑われるというただそれだけのことである。
この作品を読み始めると、その一人称しか書けない類いのラノベ作家が、一人称以外の部分でも見せるような未熟さ若さが感じられる。なので、この一人称は作者の仕掛けたトリックなのか、それとも単に作者の手癖のようなものなのか悩むことになるのである。
前半はそんなことをいろいろ考えていてなかなか読みにくかったが、後半は一気に読めた。全体の感想としては面白かったと言えるだろう。
ただ、本格ミステリーなのかというと、そこまでフェアな本格ミステリーとは言えないような気がする。ループものなので、超常現象としてのループがあるわけだが、そのループの仕組みの解説もまた一人称的に書かれている。まあ、会話相手の説明だが。それでも会話による説明なので、一から十まで全部嘘という可能性があるのだ。しかし、世界の仕組みを疑わなければならないのは読者の負担が大きすぎる。
館ものというか、嵐の山荘ものというのはまさにその通りであった。嵐で崖崩れで孤立。そもそも電話がない時代設定なので警察を呼べない。
密室は登場するが、あまりよい密室という印象は受けなかった。
ループものとしては、ループの回数が少ない。いや少なくはないけど、水増しされて多くなっているという印象である。