ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:名探偵は嘘をつかない

阿津川辰海のデビュー作。複雑すぎて難しい

とはいえ、デビューというのは作家最大のハードル。出し惜しみして、デビュー出来ずに後悔するよりは、詰め込みすぎるくらい詰め込んだ方がいい。クリスティのミステリデビュー作の「スタイルズ荘」も詰め込み過ぎの傾向があるし。

名探偵が被告の法廷物。いや、法廷物とは言い難い。ともあれ、名探偵が被告だ。そして特殊設定物。最近のミステリーは特殊設定物が多いね。

この作品の特殊設定は死者が特定の条件の下で転生出来るというもの。それも仏教徒が考えるような転生ではなくて、異世界転生物の転生か転移に近い。そういう特殊な設定なら当然それはトリックに絡んでくると思うのがミステリー読者というものであり、作者もそれは承知の上だろう。

それとは関係なく俺が逸脱して思ったのは、八百万の神の一人が転生を司る神だとして、他に転生を司る神はいないのか?ということであった。だって、火の神だっていっぱいいるんじゃないの火山の神とか竃の神とか。あるいは転生とは関係ない超常現象を起こす神がいるとか。とにかく神が一柱いたら、十柱は隠れていると覚悟するべきだと俺は思う。まあ、正当なミステリファンはそんなことは考えないだろう。

名探偵が被告というのはいい。だいたい探偵という奴らは生意気だ。この作品における名探偵の阿久津透も実に生意気で印象が悪い。

ラストは苦いと思ったら、妙にお気楽なエピローグが付いていた。まあ、これは好印象かな。

 

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