探偵じゃないので、探偵事務所ではないが、ミステリーっぽい話。前巻につづき、もものきは何もしない。というか、前巻以上になにもしない。前巻ではまあもものきの特殊体質がなければ起こらなかったことが起こっていたが、今回はいや偶然とはいっても十分起こり得る偶然という気がする。
フィクションだと無能だとか役立たずとかいう設定でも、ストーリー上は役に立ったりするものだが、もものきは全然役に立たないし、なんかついてまわっているだけで、余計なことを言うちゃんと無能な人間になっているのが素晴らしい。
今回の探偵役は秘書の花祥院凰華。あと、前巻で謎の人物だった銀子さんが姿を現す。今回は殺人事件ではなく、殺人未遂事件からの護衛と犯人探し。
なのだが、それはミステリーを装うための仮のストーリーであって、本質は家族関係の描写にある。前巻では田舎の旧家の家父長的家族の問題を描き出したが、今回は旧家ではないが金持ちの家族の問題。いやあ、最初は前回と本質的に同じ話だと思ったよ。しかし、よく読むと前回は家父長的家庭関係の否定なのに対して、今回は理想的な(母親のいる)家庭を描いている。
まあ、ミステリーの聞き取り調査のような形をしながら、何人かの理想的な母親について、あの人はいいね、すごいね、みたいな井戸端会議的な話をするのが物語の中心部分だ。もちろん対比としてダメな家庭も出てきて、その辺に気を取られると前巻と同じ話に見えてしまう。まあ、金持ちのダメな家庭に対して、こっちはもっと金持ちでしたーというマウントもあったりするのはギャグか。