ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:死体埋め部の回想と再興

まちがって、2巻目を先に読んでしまった。なので以下の感想は見当違いかも。

SFファンもめんどくさいけど、ミステリーファンも同じくらいめんどくさいのである。後期クイーン問題というのがあるらしい。大雑把にいうと探偵が示した推理が正しいとは限らないというのがそのひとつである。

この作品では、まさに探偵役の推理が正しいかどうかは検証されず、単に聞き手を納得させるかどうかという点だけが重要視される。

それとは別のミステリーの流れとして、犯人を推理するのではなくて、別の点を推理するというのもある。日常の謎系のミステリーとかがそうだが、先日読んだルピナス探偵団も犯人の行動の謎なんかを推理するものであった。

ad2217.hatenablog.comこの作品では、死体埋め部つまり、死体処理担当者たちが死体の様子に関係する謎を推理するという構成を取っている。つまり、犯罪者側の人間が謎を推理するという形である。

たとえば、傘を持っている死体がずぶ濡れなのは何故か? という謎を推理するのである。死体処理専用の係なので、犯行の経緯とかは知らないのである。まあ、依頼を受けて死体を処理するので、依頼者が殺人犯らしいということは分かっているが、それ以上の詳細は知らない。その中で、手元にある死体から状況を推理するという構造になっている。

その構造は面白い。しかし、構造が面白いということと、個々の事件の推理が面白いということは別の話である。まあ、犯人当ての場合は、早く犯人を見つけないと次の人が殺されるという緊迫感があるし、日常の謎の場合は、推理が正しいか基本的に検証されると思う。

この作品では、死体を山に埋め行く途中の退屈しのぎに、死体の変なところの原因を推理するという仕組みで、推理が正しいかどうかはどうでもよくて死体処理部の先輩が納得すればいいというので緊張感も解決感もないのが問題だと思う。

もっとも、ミステリーというよりも、キャラクターの関係性を重視した小説であり、BLを匂わせる(少なくとも腐女子なら間違いなくBLの香りを嗅ぎ当てるだろう)先輩後輩の関係性こそが重要であるという読み方もあるだろう。私は小説を読んでいて俳優やアニメのキャラが浮かぶことはまずないのだが、この作品を読んでいるときには、冬アニメ「スケートリーディングスターズ」の流石井隼人のキャラが浮かんだのである。