ネギ式

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読書感想:深海生物テヅルモヅルの謎を追え!

たいへん面白かった。

若手分類学者(学生)の博士号取得奮戦記という感じの本であり、「動物のお医者さん」のような面白さがある。

この本を手にとった理由は、テヅルモヅルという語感の良さである。ナンジャモンジャ的な名前ではないか。ケセランパサランというか。声に出して読みたい日本語「テヅルモヅル」である。そしてその形もいい。動物なのに腕が分岐するために再帰図形のような形をしているのだ。

この本の良いところの一つは、失敗や苦労が書かれていることであり、それも若い時を振り返っての苦労談ではなく、まだ若い著者が少し前を振り返っての苦労談なので、これから研究者を目指す学生にとって励みとなるであろう。

分類学という地味な分野での博士号取得は、世間を賑わせ、博士号取り消しに至ったあの研究者とは違う、ちゃんとした研究生活を描いていていて、日本の未来に希望が持てる。

この本の問題は、表題から期待される内容と少しズレていることである。そもそもテヅルモヅルではなくて、ツルクモヒトデ目の話である。そして、深海生物とあるが、深海に限らず浅い海にも生息している。さらに、テヅルモヅルと呼ばれる腕が分岐するタイプは主に浅い海に生息しているという点がある。そして生態はまだよく分からない。

とは言え、個人的に大変面白かったし、中高校生にも勧めたい本である。ちょっと読みにくいところもあるが、熱量のある文章である。

 

 

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