ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:王家の遺伝子

前回読んだブルーバックスが面白かったので、またブルーバックスを借りてみたのである。

「DNAが解き明かした世界史の謎」という副題が付いている。主にリチャード3世とツタンカーメンの話だが、それ以外にいろいろな雑談が混じっている。DNAと世界史絡みの雑談本という感じである。つまり、私にとっては実につまらない本であった。広くてすごく浅い本である。

たとえば、壬申の乱の血縁関係なんかも書かれているが、それはこの本のテーマであるDNAとは何の関係もない話である。万世一系の日本の天皇についてはDNA分析されることはあり得ないので、そこに掲載されている家系図と比較するべきDNAデータは現在も未来も存在しない。

デザイナーベービーのことまで書いてあるのだ。いや、この本のテーマとそれは関係ないでしょうよ。とにかく広い範囲のことが書いてあり、驚くほど浅い内容である。

リチャード3世だけ、あるいはリチャード3世とツタンカーメンだけに絞って、歴史であれDNAであれ、もっと深く突っ込んだ話だったら面白かったのに、残念だ。

 それで、いったい作者は遺伝子生物学の専門家なのかそれとも歴史家なのかと気になって著者紹介を見たのだが、同志社大学サイエンスコミュニケーター養成副専攻専任と書かれていた。ああ、サイエンスコミュニケーターなのか、なるほどと思った次第である。

なんというか、科学関連の施設とかが出来た時にノーベル賞受賞者を呼んで講演とかしたりするとして、それだけでは寂しいので賑やかしでするおまけの講演みたいな内容なのである。つまり、科学に関心もないし、知識もないノーベル賞受賞者の顔を見に来た程度の聴衆相手に、お茶を濁す程度の講演を本にしたようなものだ。いや、ブルーバックスを読もうという読者はもっと知的な内容を求めているぞ。この本はブルーバックスの中では極めて知的レベルの低い本だと思う。

サイエンスコミュニケーター養成では、読者の知的レベルは低く仮定せよと強調しているんだろう。