ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:家畜化という進化

私の知識が更新されていないせいで、情報量が多すぎて感想が書きにくい。

英語版が2015年という新しい本であり、進化についての新しい考えが紹介されている。以下の用語解説は私の理解のためのものなので正確ではないかも知れない。

エヴォデヴォ(evo dvo):進化発生生物学。進化に関しては従来は遺伝子に注目されていたが、進化発生生物学では個々の遺伝子よりも遺伝子の発現調整機構がより重視される。それは発現調整遺伝子を含むがそれだけではなく、DNAの遺伝子でない部分の機能も含む。

ゲノミクス:DNAの全塩基配列の決定と比較。遺伝子でない部分には変化の早い部分と変化の遅い部分があり、系統分析に役立つ。

エピジェネティクス:DNAの塩基配列の変化なしで遺伝子の発現を調整する仕組み。DNAの三次元構造の変化による遺伝子発現の調整。細胞によって発現する遺伝子が異なるのはこの仕組がかなり関係しているらしい(確定)。エヴォデヴォにも関係する。エピジェネティックな変化が親から子へと遺伝するかという問題には議論があるが、馬の額の白斑(星)はメンデル遺伝では説明がつかずエピジェネティックな遺伝であると著者はいう。競馬知らんので分からんが、ウマ娘ファンならすぐに分かるのだろう。

このような最新の遺伝学の知識を動員して、犬、猫、豚、牛、羊、馬などの家畜の進化を解説していく本である。

そして最後には自己家畜化説を取り上げて、人類の進化に自己家畜化が影響しているか論じている。ネタバラシをすると、著者は自己家畜化による人類進化の説明には懐疑的である。懐疑的というのは穏健な表現で、私の受け取った印象としては否定的というものである。都合いい証拠ばかり集めているのではないかということだ。私も賛成である。

否定的と言えば、付録8では、進化心理学を全面的に否定している。それはドーキンス創造論を否定するときの勢いにも近い。

 なのだが、私としては、問題点もある本だと思う。第一にペットについての記述が多い。私もペットは家畜の一種だとは思うが、典型的な家畜とは言えずまた極端な育種がなされるので家畜の進化を論じる時に適切な題材だとも思えない。それに著者は家畜の近系交配について、動物愛護の立場かまたはキリスト教徒か西洋倫理的な立場なのか、かなり感情的な表現をしている。

第二に余分なエピソードの記述がある。著者がラクダに乗った体験とか若い時にピクニックをした体験とか。この本の記述の主体である最先端科学とのブレが大きい。

自己家畜化などの人類進化の新説(珍説)は、マスコミの注目を集めやすいし、一般向けの本も売れるが、基本的には眉に唾をつけて吟味する必要があるだろう。