「母乳から知能まで」って副題だけど、「金玉袋から脳まで」って感じだ。
1章が陰嚢(金玉袋)の話で、金玉がぶら下がっている理由というかそのへん。広く知られた冷却説に対する反論と他の有力な説を紹介している。でも結局はどれという決め手はない。
2章がカモノハシの話。これでまともな本だと分かる。哺乳類の話をする際にカモノハシは極めて重要な存在だからである(そして私の興味もそのへんにあった)。
という風に始まり、その後いよいよ性の話になっていく。この本の著者はサイエンスライターで、原著は2017年発行であり、2000年以後の新しい学説も紹介されている。
非常に面白い。哺乳類の起源についての興味深い考察がされている。一つの説が正しいと断言されていないことが多いが、様々な(私にとって)新しい事実や考えが紹介されいる。
特に6章の「胎内で対立する父母の遺伝子」が興味深い。なるほどという感じである。利己的な遺伝子という考え方を知っていれば、これもまた納得できることだ。フェミニズム的とも言えるが、まあいまさらフェミニズム運動には影響ないか。
この本の著者は神経生理学の博士ではあるが、この本ではサイエンスライターという立場であり、やや気になる表現もある。私が嫌いな「本能」という言葉がこの本には登場する。「本能」で行動を説明しようとしているわけではないが、雑な言葉の使い方である。まあ、素人向けの分かりやすい説明ということなのだろう。