ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:コウモリ 進化・生態・行動

前回読んだ「コウモリの謎」の参考文献にあった本。分厚い。大学の教科書のようだ。「ここ試験に出ます」という感じの内容が多い。

少し古い本で、「コウモリの謎」ではコウモリ複数系統説は否定されたように書かれているが、この本では複数系統説はまだ否定されていない。ついググって調べて見てしまったが、やはり単一系統説が正しいようだ。

 

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複数系統説の根拠の一つであるオオコウモリの目の神経の接続に関するところとかが面白い。霊長類と似ているところとか。そもそも複数系統説ではオオコウモリの系統は霊長類に近いとされていたのも面白い。

エコーロケーションについても詳しく書かれていて、比較されていないので分からないが、クジラ類のエコーロケーションよりも高度に進化しているように思える。

ともかくコウモリの種数が多く、哺乳類種数の1/4はコウモリ(翼手目)。ただし1/3を占める齧歯目の方が多い。その多くの種について書かれているので記述が多くて覚えきれない。この教科書で勉強する学生は試験対策が大変だ。

まったく知らなかったこととして、トーパーというのがある。これは冬眠のように代謝を下げてエネルギー消費を抑える方法だが、冬眠とは違って期間は短く、1日のなかでトーパーをすることもあるようだ。

交尾後のメスが受精しないで体内に精子を蓄える仕組みも興味深い。精子に栄養を与えて保存するとか。受精後も胎児の成長を止めたりして出産の時期をコントロールしているとか。

この本は共進化には注意が必要と言っている。共進化は依存性が強い場合、片方が数を減らすともう片方も数を減らしというフィードバックによって絶滅しやすいから。それでもコウモリと植物の花粉媒介の共進化のようにみえる例を紹介している。

ともかく、実に多くのことが書かれていて、ひとことでは感想も書けない。それはやはりコウモリの種数が多く、様々に分化適応しているから。そして、分からないことも多い。コウモリの種類の多さに対して研究者が不足しているようだ。