ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

雑記:「時をかける少女」は「走れメロス」のようなものだと思っていた。

アニメばかり見ているブログで、時々SFの話もする年寄りなわけですが、今期の「富豪刑事」は見ていないのである。(小説は昔読んだ)

で、富豪刑事とかを読む以前の俺、かなり昔の俺は、タイトルのように「時をかける少女」は「走れメロス」のようなものだと思っていたわけです。つまり、その作家の最も有名な作品だが、その作家性とは必ずしも合わないと。まあ、勝手な思い込みなんですけどね。風刺性とかが筒井康隆の作家性だと思っていたわけです。実際は風刺性が要求されれば、あるいは売れるなら風刺性の強い作品も書けるし、そうではなく娯楽性の強い作品も書けるプロの作家なのである。そして批評家に受けのいい文学性の高い作品も書ける。

しかし、最近の文豪モノ作品群のように私たちは作家自身のキャラクターに魅力を感じてファンになるということもあるわけです。昔の若い筒井康隆世の中の権威とか常識に反旗を翻すというキャラクターを演じていて、それが筒井康隆という作家の魅力だったのです。少なくとも古いSFファンにとってはそういう面があったと思う。

年を取った筒井康隆は作家として成長してより一層深い作品を書いたり辺境領域にまで足を伸ばして行ったわけですが、作家のキャラクター性としてはやはり反旗を翻すというか、他者に批判的という立場であったように思う。しかし、筒井康隆の地位がSFを越えて日本人作家として高まってしまい、筒井康隆自身が権威になってしまったように私には感じられるようになったのです。

筒井康隆の風刺的、批判的なスタンスは、どうも時として筒井康隆自身の権威を守るように働いているように感じるようになってから、筒井康隆という作家のファンをやめたように思う。

しかし、こうして振り返ってみれば「時をかける少女」は筒井康隆の初期から続く娯楽性の高い小説のひとつとして、やはり代表作と言えると思うのである。

もうファンじゃないから富豪刑事のアニメは見ないけどね。

時をかける少女 (角川文庫)

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富豪刑事 (新潮文庫)

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走れメロス (新潮文庫)

走れメロス (新潮文庫)