古本市で買った本。1978年発行。
1945年から1960年までの間に発表された日本SF短編のアンソロジー。短編なのでサクサク読める。よい。
星新一「収穫」
この作品集の中ではかなり異色で星新一らしいが、星新一の作品全体の中ではあまり星新一らしくない気がする。初期の作品だからか。水爆衛星の話。
飯沢匡「日本陥没」
日本沈没のドタバタ戯曲。日本沈没が頭にあるとなぜ陥没なんだろうと思うが、浮かんでいるものが沈没するのであって、隆起したものは陥没するのが正しい使い方だろう。つまり日本陥没が正しい。
斎藤哲夫「宇宙混血」
有人火星探査の話。混血はないだろうと思ったら、ちゃんと遺伝子操作していた。
香山滋「緑の蜘蛛」
秘境もの。全裸の美少女(ロリババアの可能性あり)。
高田保「民主主義・蝦蟇の油」
タイトル通りの蝦蟇の油売りの口上。ヘンな話だ。そしてなんとダジャレ落ち。ダジャレSFか。
大下宇陀児「夜の輻射線」
桃源郷?のような異境で結婚相手を探す話。ファンタジーっぽい。太陽の熱と光のズレによって、夜が暖かく昼が寒い地域が出来たという設定。
日影丈吉「彼岸まいり」
月に墓地が造られていて、月まで墓参りに行く話。
三橋一夫「勇士カリガッチ博士」
ネズミのカリガッチ博士の話。SF性が一番低いかな。話は面白い。
光波耀子「紅いの桃源郷」
これも水爆衛星の話。ポストアポカリプスもの。星新一の作品といい、この時代には水爆衛星が大量に地球の周りを回るようになるという暗い予想があったようだ。
北村小松「未知界からの触手」
被爆者が超能力を得るという系統の話か。タイトルと現象の割にはみみっちいオチ。だが嫌いではない。異次元というかマルチバース宇宙のようだ。ド・ジッター宇宙という言葉が出てくる。
丘美丈二郎「波」
白嶺恭二シリーズの1作か。ド・ブロイ波という言葉が出てくる。白嶺恭二がSF的怪現象に出会うという話。
槇敏雄「クレヴァス」
有人月面着陸競争の話。二大陣営で月面初着陸を競う。この時代の月面探査のアイデアでは人工衛星(宇宙ステーション)まで一度行って、そこで組み立てた宇宙船で月に向かうようだ。競争する一方がもう一方を出し抜いたが……。サスペンスあるけど、なんと乱丁である。ページ番号は順番どおりなのに、内容が前後している。乱丁とは言わないのかも知れない。製本前のミスだろう。
今日泊亜蘭「訪客」
UFOもの。日本の田舎にUFOが着陸する。
タイトルはほぼ関係なく、有人月面着陸からのホラーというかサスペンス展開。月に向かう途中の宇宙ステーションが、なぜかヌーディスト村みたいになっている。細かい描写はないが、たぶん無重力セックスあり。それとは関係なく、月に着いてからがホラーサスペンスっぽい。
あと、月面探検隊員に一人だけ女性が選ばれるのだが、その理由が若くて美しいから。隊員は隊長が独断で決めた。