亡念のザムド 5周目くらいを見終わった。
2008年のアニメ。
最初がPlayStationStoreでの独占配信だったので、結構知らない人もいる傑作。
なんといっても、このアニメの三大勢力、北政府、南大陸自由圏、ルイコン教のどれもがひどいというのがよい。
北政府はソ連みたいだが帝国であり、北朝鮮とソ連とロシア帝国の悪いところを集めたような国。南大陸自由圏は、全体像は分からないけれど、日本みたいな先端島付近では、どうも大日本帝国っぽい感じがする。ルイコン教は自爆テロを起こしているし、ザムドを産む出す元凶でもある。
ルイコン教がよく分からないのだけれど、そこがよい。エヴァの場合はキリスト教関係の用語を適当に拾ってきてそれっぽい感じにしているだけで深い意味はないということが、ある程度見ると分かってしまうわけだ。一方、ザムドのルイコン教は架空の宗教だけあって、視聴者の知っているそれっぽい言葉だけで成立させるという訳にはいかない。
以下はネタバレというか、俺の個人的な解釈である。
どうも、ルイコン教は、もともと産婆の集団だったようだ。その産婆が死産の子供(に対する母親や産婆)の無念の気持ちを慰めるために宗教化したのではないかと思われる。普通に生まれた人は死んだ後に魂が輪廻の流れに戻るのだが、死産だった場合はそのままでは魂が輪廻の流れに戻れない。その魂を輪廻の流れに戻すのがルイコン教の役割のようだ。死産だけでなく、お腹に子供がいる母親が死んだ場合も同様。死産の子供の魂はヒルコと呼ばれる。
歴代のルイコン教の指導者サンノオバは、産婆として北政府の皇帝の子供を取り上げる役割を背負っていた。ところが新しい皇帝となるべき子供が死産だった。この子供の魂を輪廻の流れに戻すべきであったが、北政府は死産の子供に無理やりヒルコを入れて生かすことにした。ここで北政府はルイコン教と対立しルイコン教と、それを信じるテシクの民を弾圧する。もともとテシクの民の地位は高くなかったようだが、皇帝となるべき赤子の死産で決定的になったようだ。
サンノオバに率いられたルイコン教徒がザムドを生み出すのは、皇帝になるべき赤子の魂を輪廻の流れに戻すためのようである。
でも、これだけだとまだ全部は説明できないのだが。
ともあれ、ルイコン教は1話でテロを起こし主人公のアキユキをザムドにした元凶でありながら、その後はアキユキの精神的指導者みたいな形になるのが、実に居心地が悪いのである。でもその居心地の悪さが宗教らしい。宗教というものの割り切れなさがよく表れていると思う。
そしてまたルイコン教とは別に、作中でしばしば引用される詩が、意味不明でよい。この詩は現実に存在する茨木のり子の詩だという。
なんというか、わからないところがよいのですよ。腑に落ちない不安なところがよい。そのわりに、最後はなんかすっきり解決したみたいに終って、騙されるんだけど。