ネギ式

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創作:異世物語 7. 人知れぬ通ひ路

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昔、この世界に現代日本から転移してきたおたく男がいた。男には恋する相手の女が居たが、女は手の届かないところに行ってしまった。男はダメ元で「リセット、やり直し」と叫んだのであった。

そしたら、恋する女が居なくなる前に戻れた。やれば出来るものだなぁ。

そういう訳で、男は東の五条にいる愛する女のもとに超こっそりと忍んで通った。もちろん、門から入る訳には行かないので、土塀の破れ目からこっそり入った。それはおそらく屋敷の子供が習い事をサボって抜け出すために作った破れ目であろう。とても狭いところを苦労して通るのであった。

人に見られた覚えはないけれど、何度も通ったので見つかったのだろう。屋敷の主に知られてしまった。主はその破れ目に夜の間見張りを付けて不法侵入出来ないように守らせた。それで男は屋敷まで行ったけれど、中に入れず、女に会えずに帰ることになった。仕方がないので歌を詠んだ。

人知れぬわが通い路の関守は宵々ごとにうちも寝ななむ

誰にも知られずに愛する人のもとに通っているはずなのに、どうして見張りの人がいるのだろう。泥棒が入らないように見張っているのならば、私が通る宵の時だけは寝てしまって欲しいものだなぁ。

体は中に入れてもらえないので、頼み込んでその歌だけを女のもとに届けてもらった。女はもう男が通ってこられないと知って、すっかり気持ちが弱って悲しみ、何日も泣き暮らすのだった。

屋敷の主は、女の悲しみに同情して、男が通うことを許した。