ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:探偵になりたい

ユーモアミステリということだけれど、笑えなかった。笑える状況じゃないよ。

主役のスタンリー・ヘイスティングスは、カバー見返しの登場人物欄では事故の調査員ということだけが、弁護士事務所のセールスマンという方が近い。テレビコマーシャルを出している弁護士事務所にCMを見た依頼者から電話がかかってくると、その依頼者のところに行って損害賠償請求とかの証拠写真を撮って依頼者から弁護士の契約を取ってくる仕事。雇い主の要望によって探偵免許を取得しているものの、やっていることは弁護士事務所のセールス。

ただし、弁護士事務所に雇用されている訳ではなくて、別に事務所を持っている。その事務所にしゃれで「探偵事務所」という看板を出していたら、勘違いした人が探偵の依頼にやってきた。しかも、「人を殺したい」という依頼だ。

この出だしは面白いのだが、依頼を断ってしまう。そして依頼者が殺される。スタンリーは事務所に探偵という看板を付けるくらいなので、ハードボイルド探偵に憧れていて、この殺人をきっかけに捜査を始める。

でも、スタンリーには奥さんと子供がいて、奥さんからは仕事をしないと責められている。そういうユーモラスな設定らしいが、そこが笑えない。

スタンリーが相手にするのは麻薬密売組織で、殺されたのはコカインの運び屋なのである。スタンリーは自分が殺されることを怖れているが、勇敢に立ち向かうと思っている。でも、日本人読者の俺からすると、危険なのは奥さんと子供だと思うのである。お前が、ハードボイルド探偵の真似をして危険にさらしているのは、家族なんだぞ。そう思うと笑えない。

更に、スタンリーはコカインらしきものを見つけてペロッと舐めてみる。どうもコカインらしい。しかし、確証がないので、砕いてストローで吸引してみる。これは確かにコカインだ。この部分はアメリカではユーモラスなのかも知れないが、日本人の俺から見るとひどいと思うのである。

スタンリーの倫理観も謎で、金にもならないどころか自分の貯金を使って捜査をしている。その一方で、コカインをパクったり金をパクったりしている。やはり動機は正義感でも金銭欲でもなくて、ハードボイルド探偵のまね事をしたいということのようだ。

主役が独身なら笑えた気がするけど、笑えなかった。