ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:文政八州廻り秘録

笹沢左保って読んだことなかったんだけど、それで読んだわけではなく、八州廻りに興味があったので読んでみたのだ。

八州廻りの正式な名前は関東取締出役であり、この作品中の言葉を借りるとFBIのようなものらしい。関東は小藩や旗本の知行地が多くて、統治が分割されていて、犯罪者を取り締まることが難しかったという。そこで領地を越えて犯罪者の取り締まりが出来る機関が作られたということだ。

話の設定として面白いと思ったのである。

でも、この短編集の出来はあまりよくないと思う。なんというかテンプレ感が強い。いや時代小説も捕物帳もそんなに読んでいないけれど、押し込み強盗があって、主役の八州廻りと事件関係者の色ごとがあってとパターン感が強い。

短編ごとに主人公が変わるのも、共感しにくい。関東の様々なところを事件の舞台にするために、主役を変える必要があったのかなという気がする。

それから変にミステリ要素があるのもおかしい。最初は二つの連続した押し込み強盗事件の現場の距離が離れているので時間的に不可能という話。トリックとしては成立しているけれど、そんな余計なことをしない方が犯人には有利なのではないかと思うんだが。

あと、各短編の後味が悪い。それが笹沢左保の個性なのかも知れないけれど。なんかハードボイルド探偵の虚無感のある結末に近い気がする。文章はハードボイルドじゃないけど。

 

代表作という訳でもないみたいだし、単なる量産作のひとつかもしれない。