ネギ式

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読書感想:彩雲国物語2 黄金の約束

国試(科挙)に向けての話。重要な登場人物が出てくる。文武両道のクマ男、仮面の奇人、おじさんと呼んで欲しい男など。前巻の事件の結果として、茶州の問題が明らかになる。秀麗の雷嫌いからの母の思い出。こうしてみると、シリーズの構成がこの巻で整えられていくのが分かる。

宮廷では猛暑の影響で官吏が病気になり、人手不足。紅秀麗は男装して非常勤の官吏になる。人使いの荒い仮面の奇人である戸部尚書のもとで働く。夜はまだ受験のあてもないながらも、国試の勉強をする。

王の紫劉輝は女性にも国試を受けられるようにする法案の準備に忙しい。李絳攸が王の法案作成の指導をしている。

クマ男こと浪燕青は紅秀麗の家に居候し、一緒に非常勤の官吏をしながら、夜は茶州からの追手を捕まえる日々。

国試の勉強といいながら、何を勉強しているのかはよく分からない。詩作の勉強をしているようには思えないし、儒教の経典を暗記しているようでもない。そもそもこの世界が儒教的世界かどうかも分からない。まあ、中華風ファンタジーなのでまったく影響がないとも思えないが、特に儒教的な部分というものはない気がする。仙人がいるので道教的な世界だと思うが、道教儒教は社会の中では両立しうるので儒教がないとは限らない。彩雲国の歴史とか法律が試験の内容なのではないかという気がする。

女性が国試を受ける壁は大きく、王の一言で受けられるようになるものではなく、宮廷の官吏たちの賛同を得なければならない。王を含め有力者の支援があって初めて女性登用の法案が成立するので、紅秀麗の才能や努力だけでどうにかなるわけではない。非常勤官吏をさせるというのも李絳攸の策略のひとつだったわけだ。で、20位以内で合格しなければならないという条件が付けられる。できなければ、今後の国試を女性が受けられるという制度はなかったことにされる(1回だけの実験的な試み)。

試験そのものの描写はなくて、巻末で紅秀麗は探花(第3位)合格したことが示される。いやあ、フィクションだから当然とはいえ、それまでの努力や非常勤官吏として有能さがちゃんと示されているので、納得と感動がある。そして1位でないというのもいい。だが、紅秀麗が本格的にその能力を発揮するのは官吏になってからである。