ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:三体

図書館での貸し出しの順番が廻ってきて、ようやく読めた。これを読めというプレッシャーを強く感じていたのである。

中国人作家のSFで、英語版がアメリカのヒューゴー賞を受賞した作品である。

三体

三体

 

 物凄く話題になっていて、読まなければと思っていたのだが、三部作の一部というのが気になっていて、なかなか読む気になれなかったのである。しかし思い切って市立図書館の予約でポチってじっと待ったのであった。

よいところ

イナゴというのは正確ではなく、飛蝗というのが正しいのだが、この飛蝗が空を埋めるほど飛んでいる情景が最後の方で描かれている。これは典型的には絶望のシーンである。すべての植物を食べ尽くす飛蝗の前に人類は無力だからである。

しかし、この作品において、このシーンは人類の希望を表している。しかも、深い絶望から回復した希望である。これは実にSF的な視点の転換だと思う。

2番めの章題が「沈黙の春」であり、この飛蝗が描かれている最後から2番めの章題が「虫けら」なので、最初から計算の上での構成であろう。この「虫けら」の章を読んだところで、俄然面白くなってきた。

ツッコミどころ

それは三体問題じゃなくて四体問題になるだろう。太陽が三つで惑星が一つだからね。四つだね。そして解析的な解がないということや一般解がないということと特定の場合に解けないということは別だし。まあ、そのへんはSFのトリックとしていいんだけど、タイトルになっているだけに私がツッコミたくなるのは仕方がない。

奇跡を見て科学者が絶望するというのはおかしいと私は思う。ワンミャオの見たその奇跡は、むしろ高度な制御が行われていることを示しているので。

キャラクター

史強がいいね。喫煙キャラを私が褒めるのは異例と思って欲しい。科学者連中がすぐに絶望したり思想にかぶれたりする中で警察官の史強がたくましいというか、これは中国の民衆の強さだと思う。

ネタ

「中国のコンピュータ」というネタがかつて実際に存在したのである。そのネタがこの作品の中で使われているのが面白い。なにしろ中国をやや馬鹿にしたようなネタだったのだから。しかし、今やスパコンランキングで上位を独占するような中国であるから、このネタを扱うのも余裕なのであろう。

ちなみに、日本のコンピュータというネタを私が今思い付いたのでメモしておこう。中国のコンピュータには二次元平面上での計算という限界がある。日本はこの中国のコンピュータを超えるために三次元的に人員を配置する計画を作った。しかし、三次元配置には人体が力学的に弱いという問題がある。そこで小学校から組体操で鍛えることによってこの問題を解決し、三次元日本人演算装置を作り上げるのである。