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読書感想:射雕英雄伝

金庸の長編武侠小説である。面白い。金庸は日本で言うなら吉川英治司馬遼太郎かという感じである。いやこの二人はかなり違うけどさ。

射雕英雄伝―金庸武侠小説集 (1) (徳間文庫)

射雕英雄伝―金庸武侠小説集 (1) (徳間文庫)

 

 ただし、ハードカバー版で5巻あるうち、最初の1巻は主人公誕生までの経緯とかいろいろあってまだ調子が出てこない感じでそこまでおもしろ訳ではない。ヒロインも登場するのは1巻の最後の方だし。

そして、最終巻の5巻では、話をまとめに入っているので、やはりやや面白さが抑えられている気がする。

しかし、途中の2,3,4巻はすごく面白い。まさかこんな武侠小説の展開の中に、無人島で筏を作る話が挟まるとは思わなかったよ。グルメ漫画並みの料理も登場するし、やりたい放題ですな。

なんといってもヒロインがいい。武術も出来るし料理もすごいし、詩や書画の教養があって、数学も出来る。主役の青年は素朴でアニメでいうと「天地無用」の柾木天地のような感じか。また、師匠が多すぎる点は漫画の「史上最強の弟子」にも匹敵すると言うか、それを超える。最初の師匠が7人+1人で、その後更に増えるから。才能がないとか言われるのもケンイチに似ている。

そんな主役二人のすれ違いなどを描いた少女マンガのような側面もあり、まさに娯楽小説であり、老若男女を喜ばせようというサービス精神が伺える。

ただ、タイトルの「射雕」というように主人公は弓の名人に習って弓の腕も凄いのだが、途中からほとんど弓を使わない。まあ、武術の達人に弓矢はそうそう当たらないからだろう。

また、日本は狭いが中国は広いわけだが、中国の広さは感じられない。たぶん、作者の住む香港が日本以上に狭いところだからだろう。

お気に入りのキャラは、「老頑童」周伯通。

日本の最近のラノベに飽きたら、金庸を読むのもいいんじゃないかな。武侠武侠でテンプレかも知れないけど、日本のラノベとはテンプレ自体が違うわけだから。