ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:完全犯罪大百科(下)

エラリー・クイーン編のアンソロジーの下巻。

最初、上巻は良かったけど下巻はそうでもないとか思ったが、途中で印象は変わった。アンソロジーとしてのオチとかがよい。

 

 

サムとヤンキーの同盟者:これは詐欺というよりも、間抜けな話である。落語のようだ。

金策アメリカの当時の法律の抜け穴の話。意外なオチというよりも、「へえ、そんな抜け穴があるんだぁ」という印象で終わってしまう。

ケリハー事件:こいつは紛れもない悪党だ。最初から最後までずっと汚い。傑作。

ソールズベリ裁判:法廷物ではなくてドタバタ。

真鍮の蛇:贋作は模造品だと言って売れば問題ないようだ。蒐集家が勝手に本物だと思って買う。その業の深さで騙される。

陽動作戦:なんとウィリアム・ホープ・ホジスンの作品だ。密輸の話。鮮やかな手口だが、今となっては似たようなネタを見ているので分かりやすい。

海外電報:これは心理学を使うシリーズ探偵が負ける話のようだ。それだけ読んでいいのか分からん。

愛国者、地下鉄サム:エラリー・クイーンの要請によって書かれた戦時中(1944年)の地下鉄サムの話。

アンドルー・ラング三つの事件:これも悪党だが、俺の印象ではやはり悪徳弁護士の方が悪党らしさで上回る。

盲点:原作とオチが改変されている。原作のオチがイギリスでしか通用しないものだからということ。

ぺてん師エラリー・クイーン:なんかこれ、上巻にあった話とネタが被っていないだろうか。まあ、自作を入れるのは編者特権。

ショーダウン:いかさま賭博の話。賭博ものでは、相手のいかさまを破って勝つというパターンがあるが、うまくいかないこともある。

柳の並木道:いかにも文学的。

街を求む:フレドリック・ブラウンだ。ミステリというよりショートショートか。ギャングをやくざと訳してある点も含めて、まっったく現代日本にそっくりそのまま当てはまるような話である。

あとがき:バーナード・ショー曰く「公立図書館の棚を浄化したがる人びとの意見に従ってはならない」。というのがこのアンソロジーの編纂理由だったのだ。ド嬢恐るべし。これがこのアンソロジーのオチ。直前のブラウンの作品も合わせると結構編者の意見が強いかも。

それを別にしても、アンソロジーとして傑作であるし、読書案内としても役に立つ。

 

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