ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:国を救った数学少女

原題は「The Girl Who Saved the King of Sweden」
数学少女というよりも天才少女という気がするし、スウェーデンを救ったといってもマッチポンプ的な気もする。
作中では30年くらいの時間が経過する長い話である。そして普通の人間が30年間少女で居続けることは難しい。
アパルトヘイト南アフリカから話は始まるが、大部分はスウェーデンの話である。うーん、難しい。抱腹絶倒のドタバタ劇とは思えない。アパルトヘイトとか核兵器とかテーマが重いので。政治的寓話という気もする。大部分の日本人にとっては政治的過ぎる気がする。もっとも作中の歴史は2010年までなので、政治的ドタバタと言ってもトランプ大統領は登場し損ねているし、中国の情勢も現状ほど悪化していない。
読んでいる途中で似ていると思ったのは銀河ヒッチハイク・ガイドである。なんとなく。
図書館で借りるのでなければ、多分手に取ることはなかった作品。本屋でなければ出会えない作品もあるし、図書館でなければ出会えない作品もあるし、ブログで紹介されていなければ出会えない作品もある。そして、同人誌即売会でなければ出会えない作品もある。
なんだかんだ言っても、後半は一気に読んでしまったので、たぶん面白い。政治的にすごく偏っているとは思わないが、もちろん一人の人間が書いた作品なのだから、政治的に中立ということはありえないというくらいの批判的精神で読むことは必要だろう。そうだ冷笑的な気がする。冷笑的な態度は特定の政治的立場に偏ってはいないが、政治的に正しい態度だとも思えないのである。あるいは私の世界政治に対する知識が足りないだけかも知れない。
後半のカップが実にイライラする。しかしそれはバカップルの政治的立場よりも、そのバカさにイライラするのである。そういえば、このバカップルの顛末は特定の政治的立場を表していると言えるかも知れないが、それは著者がスウェーデン人で、スウェーデン人向けに発表された作品だからであろう。それに日本ではもっとずっと強く政治と結びついているので、同じことが日本でも言えるとは思わない