ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

アニメ感想:正解するカド

dアニメストアで0話から見たのである。すごく評判が良くてその評判に流されるままに凄まじく期待して見たのである。

 

 

 

これは(新)本格ミステリではない。

誰もミステリだとは言っていないわけだが。で、0話というのは、物語のプロローグとして主人公の真道が凄い交渉官であるということを示すエピソードとなっているのだが、俺に言わせれば、このエピソードでは真道は凄い交渉官ではない。というか、交渉官として駄目だと思うのである。俺の(特殊な)考えでは、交渉官というのは利害の(部分的に)対立する二者の間で利害の調整を行う者であって、依頼者の隠された動機に応える者ではないからである。そう、ワイダニットは本格ではないというのが俺の(特殊な)考えなのである。しかし、真道がしたことはワイダニットに対する推理であり、よってこのアニメは(新)本格ミステリではないということになる(俺の特殊な考えでは)。本格ミステリなら、双方の明示された対立する利害を論理的に解決するべきである。

リアリティは物語の邪魔である。

今更言うことでもない。例えば、多くのSF作品において何らかの方法で光速を超えて宇宙船が移動するが、これは物理学に反するのでリアリティがない。しかし、光速以下で移動していたのでは(多くの場合)物語が進まない。それと同様に、現代のリアルな政治や政治家を描写していたのでは、もはや物語が成立しない。そういう時代になった。このアニメにおいても、政治や政治家にはまったくリアリティがないが、それはリアルな政治を描写すると物語が成立しないからである。最初に俺はそのことに気づかずにこんな政治家いねーよとか思ったが、よく考えたら当然であった。

もったいないオバケが出るよ。

0話だけでなく、本編でも真道は交渉官としてまったく活躍していない。宇宙人(宇宙人じゃないけど)がプレゼントすると提案し、日本政府の首相がそれを素直に受け入れる。交渉官の活躍する状況ではない。まったく、なんだよこれは。もったいないオバケが出るよ!だいたい宇宙人も宇宙人だ。善意から(善意じゃないけど)一方的にプレゼント与えるなんて人間を知らないにも程がある。たとえ一方的に物を与える理由があったとしても、いや、裏の理由があればこそ、表面的な代価を要求するべきではないか。いや本当の善意ならば、それはそれで相手に負い目を負わせないために形式的な代価を求めるべきなのだ。

例えば俺ならこうする。ワムの代価として宇宙人はある金属を求める。宇宙人はそれを勝手に地球から採掘することも出来るが、善意ある宇宙人なので人間から提供されることを望む。金属Naが必要であるという宇宙人に対して、日本にはそんなに大量の金属Naはなく買い付けるにしても時間が必要である。宇宙人は速やかに提供して欲しいと望み、対立が発生する。そこで主人公は廃炉になった「もんじゅ」内にある冷却用Naを提供することを提案する。よかったよかった。まあ、Naじゃなくてトリチウムでもいいけど。いや、そういう政治的に微妙な問題ではなくてもいい。何か少し提供に困難のあるものを要求されて、それを解決しろよ、凄腕の交渉官なら。ああ、もったいない。ここで受け取った代価をぞんざいに扱う描写を入れると、本来の目的はそれじゃないという伏線にもなるし。ああ、もったいない、もったいない。

アニメは動いてなんぼである。

いやあ、アニメというのはやはり動きである。俺はついストーリーに注目してしまうが、それなら小説でもいいわけで、アニメならではの表現というものを考えると、それは動きなのである。しかし、神作画というものはそんなに高く評価しない。いや、俺は人間が時間をかけて苦労して高品質のものを作り出すことをあまり高く評価しないタイプの人間なのである。楽していいもの作ってよ。というわけで、このアニメでは数学的に生成された3D動画が見どころなのである。これは(実際には3D作成に長時間の調整や職人芸が入っているにしても)見ていて楽しい3D動画である。とすると幾何学的な3D動画がメインでそこに物語を貼り付けたアニメとして見ることも出来る。そういうアニメがもっとあってもいいと思う。(神作画の戦闘シーンに物語を貼り付けたアニメのように。あるいはラッキースケベシーンに物語を貼り付けたアニメのように)

テンプレは作品を面白くもするし、つまらなくもする。

またつまらない当たり前のことを言ったが、テンプレ作品が悪いわけではない。多くの人は王道展開を好むものだ。俺は変な作品を好むタイプだが、テンプレを否定しているわけではない。しかしテンプレが作品をつまらなくすることがあることは異世界転生系の作品で明らかであろう。このアニメはテンプレ作品ではなく多くの点でテンプレを破っている。そこがいいわけだ。ところで、この作品に戦闘アクションは必要なのか? 戦闘アクションはこの作品を面白くしているのか、逆につまらなくしているのか? 制作陣とじっくり話し合う必要がありそうだ。いやいや、俺がそんなことできるほど偉いわけがない。まあ、製作側の上の方からの要望だろうけど。

愛があればセックスしてもいいのか?

思春期の子供の疑問かよ。変な表現になってしまったのは、物語の後半のネタバレを含むので。まあ、愛なんてなくても二人がそうしたければセックスしてもいいわけだ。それはそれとして、恋愛感情があるということが、すべての免罪符になるかというと、そうはならないだろうというのが俺の考えである。手段としてのセックスは肯定されるのか。特にこの作品の場合は重大である。その点でもやはり真道の問題解決能力は不十分である(適切な手段で解決していないので)。それに、愛があるといっても公式カップルは違う組み合わせだろうというツッコミも入れておこう。

結論

凄まじい期待を持って見たので、不満な点がある。個々には納得出来たり、よい出来だと思うところもある。特に戦闘シーンについては、それ抜きで作品を成立させてほしかったなぁ。あとに続く作品のためにも。

あと、セーラー服の小娘よりビジネススーツのお姉さんの方が萌えます。