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読書感想:泥棒はライ麦畑で追いかける
泥棒バーニイシリーズ。軽いネタバレがあるかも知れないが、犯人については書いてない。
今回はバーニイが泥棒に入った先で、死体に出くわして容疑者として逮捕されるという本来のパターン。物語のベースは、サリンジャーのラブレター暴露事件だが、サリンジャーではなくて架空の作家になっている。ちなみにオレはサリンジャーは読んでいない。あんな有名な文学作品なんて、いまさら読む気にはなれない。いいんだよ、オレは娯楽作品専門なんだから。
どうもバーニイが泥棒だということは世界中の人間に知られているようで、様々な人がバーニイに泥棒の依頼に来る。その意味では、依頼を受けて事件を解決する探偵もののパターンに近い。まあ、今回はいろいろな人が同じものを盗んでくれと依頼するわけで、全員の要求を叶えるのは難しいのだが。
そしてバーニイシリーズはどうやらニューヨークものらしく、バーニイの書店やアパートの近くで事件が起こるというか、歩いていける範囲で盗みを働くとか、いいのか泥棒として。まあ、ニューヨークはそこそこ広く、そこそこに狭いというのは、スパイダーマンのゲームをした私の実感である。
バーニイは泥棒なので、容疑者を集めてのバーニイの推理も公的なものではなく、表向きには単なるパーティであるが、途中で警官が容疑者の権利を宣告するので、容疑者の言ったことは証拠採用されるという仕組みである。そもそもバーニイは証拠を捏造するので、バーニイの証拠は裁判で使える証拠にならない。まあ、推理を披露するところだけ見るとパズルミステリーみたいにも見えるのだが、全体的にはそうではくて、うんちくとオシャレな会話のミステリーである。
この警官、レイ・カーシュマンも正義の警官というわけではなく、私腹を肥やすことに熱心だが、すくなくとも殺人事件を解決しようという気はあるようだ。毎回食事と酒を一緒に楽しんでいるレズビアンの親友キャロリン・カイザーは会話の相手としての便利キャラみたいなものだが、その割には好感が持てる。ふたりの会話がいいからだろう。
ラストは私の好み。たぶんこのラストもバーニイシリーズのパターンだろう。なんといっても泥棒だからね。その割に倫理的であるとも言える。サリンジャー事件のサリンジャーを支持する立場なら、このラストには喝采を叫ぶのではないだろうか。
ベッドシーンはあるけど、そのシーンの描写はそんなにない。事実はあるけど描写はないというべきか、それはベッドシーンがあるとは言わないのかも知れない。映像作品にすればそのシーンはあるだろうけど。
ところで、この本を読んでいたら、紙の模様がすごく読みにくくて、ただでさえ老眼なのに、まったくハヤカワもオシャレな紙にこだわって余計なことをしてくれると思ったが、翌朝見直したら模様が入っているのは一部のページだけであった。紙の品質にバラつきがあるのか。