直接的には「フリーレンのストーリーが分からない」という話を見てからなんとなく考えていたことを今頃になってだらだらと書いてみた。特に結論はない。
なお、私は以下の作品は主にアニメしか見ていない。
分からなくて当然というのが最初に思ったことである。なぜなら、フリーレンにはストーリーらしいストーリーがないから。ここでいうストーリーというのは、個々のエピソードを繋いでいる作品全体の流れというような意味である。
一応、死者と会える場所に行って、死んだ勇者ヒンメルの魂と会って話をするという目的はある。しかし、それはストーリーというよりも設定に近い。フリーレンには是非ともそうしたいという強い動機がない。
なんとなく目的地に近づいているけど、この先あまり目的地に近づきすぎるようなら、双六のように「ふりだしに戻る」があっても不思議ではない。罠にかかりやすい性格だから、テレポートの罠で飛ばされるのもありだろう。
フリーレンの話の本質は個々のエピソードにある。全体のストーリーの進行を追おうとして無駄なのである。そして、個々のエピソードにおいても、フリーレンはほとんど積極的に行動しない。そういう性格設定なので仕方がない。個々のエピソードでも、長寿種と短命種のネタだったり、魔法の発達に関する現代的常識だったりして、問題解決という形は取らない。問題発生から解決というわかりやすいストーリーではないのである。
というわけで、フリーレンはエンタメ作品の中でも特にストーリーが薄くて分かりにくい作品だと思う。サザエさんやうる星やつらにも全体のストーリーはないけど、これは全体のストーリーがないとはっきり分かるのに対して、フリーレンは全体のストーリーがありそうに思えるから、分からないという感想になるのだと思える。
一方、SPYxFAMILYには、全体のストーリーがある。主人公ロイド・フォージャーにはなすべき任務があり、その任務を達成しようという強い意志がある。
個々のエピソードは、任務達成に必要な行動だったり、任務の妨害になることを排除する行動だったりする……はずだったが、任務と全然関係ないエピソードが多数発生してしまっている。
ストーリーの流れはよく分かるだけに、ストーリーが進んでいないこともよく分かる。特にヨルさんの任務は本来のストーリーと全然関係ないのが問題だ。アーニャの行動なら、よい方向にしても悪い方向にしても任務に影響するのだが……。目的がはっきりしていると、目的に向かって進んでいないというストレスを読者・視聴者は感じてしまう(可能性がある)。キャラの魅力だけで見ていれば、気にならないにしても。
これを避ける方法として、大きな目的達成に必要な中間目標を段階的に達成していくという形式がある。鬼滅の刃はこの形式だと思う。〇〇編というまとまりで、その中で達成すべき目的やピンチがあり、それを解決する。これを繰り返して、先に進む。全体の流れも分かりやすいし、中間目標も分かりやすい。
ただし、これも中間目標が無限に湧いて出るようになると、いつまで経っても大きな目標の達成に近づかないというストレスが発生する。あと、中間の話がやたら長くなったり。
もっとも、源氏物語だって伊勢物語だって、全体の流れはあるようでないようなものである。主人公の年代記のようにまとめられているから全体の流れがあるように見えるが、それは後からそうまとめただけで、主人公や周りの人間の設定を同じくするエピソードの集まりというのが本来の構成であろう(源氏は主役交代があるけど)。当時の人だって、年代順に源氏の写本が手に入った訳ではなかろう。ストーリーよりキャラ萌えの作品である。あるいは各エピソードのゲストキャラ萌えの話。
一方、起伏のあるストーリーがある程度の長さで終わるエンタメもある。(長編)エンタメ映画がそれである。いや、映画の原作となる小説もそうである。これはちょっと説明が難しい。
まず、映画も小説も人気が出ればシリーズとなる。なので一本の映画をエピソードとした超長編作品とみなすこともできるかも知れないが、たぶんそれは違う。映画はシリーズとなった場合でも、一本での完結感が強い。一本の映画の中で起伏のあるストーリーがちゃんと終わる。エンドロールが流れる時の終わった感。これが重要なのである。
小説の長編シリーズも、一作ごとにちゃんと起伏があって終わるものと、そうでないものがある。ミステリーのシリーズなら、一作ごとにちゃんと事件が解決する(はずだ)。
なのだが、やはりそうは行かなくて、スターウォーズは1作では完結していないし、アベンジャーズとかも、終わったと思っても、終わってなかったりする。
視聴者としては、次で終わるなら次も見たいが、どうせ次でも終わらずに更にだらだらと続くんだろうと思うと、うんざりする気も出てくるだろう。
人気がある限り続けたいというのは商業的に当然のことだが、だらだらと続くシリーズは、最初から手を出したくないという読者視聴者の考えもある。(ペリー・ローダン シリーズにかつて手を出した俺が言うのもなんだが)
どこから読んでも構わないシリーズというのがひとつの理想だと思う。
個人的に起伏のあるストーリーは映画1本くらいの長さがよい。TVアニメなら1クールか2クールくらい。それが、どこから読んでも(見ても)いいシリーズになっているのも良い。
プリキュアとかそういう感じか(4クールだけど)。最近のは見てない。(おしりパンチのやつ(ハートキャッチプリキュア)くらいまで)
などと言いつつ、俺もプリパラはアイドルタイムまで(4年分!)見てしまって、傑作だと主張しているので矛盾はあるのだが。
その点では、SHIROBAKOのTVシリーズは2クール作品で1クールごとに終わった感があり素晴らしい。劇場版はまた別の話で独立して見てもいいけど、ファンとしてはTVシリーズを先に見てほしい。
ということでSHIROBAKO推しで終わりたい。