Is Real world really real?
この英語が正しいか知らんけど、そんな雰囲気で。
年寄りの記憶は改変されているものだが、俺の中学の時に数学教師が「2乗してマイナスになる数はない」とすごく強調していたので、その後に虚数(複素数)の存在を知った時に、とんでもない嘘を教えられたと思ったのである。これは昔の話で、今の中学教育はもっとうまいこと誤魔化しているのだと思うが、昔はそんな風だった。
まあ、誤魔化しているにしてもなんかこのあたりの中学校の数学教育から虚数嫌悪(複素数嫌悪)みたいなものが生まれてしまうのではないかと思ったりする。嫌悪とまで行かなくても苦手意識とか。
それで俺は逆に、この現実世界(real world)は実数(real number)じゃなくて複素数が基本ではないかと考え始めて、結構そうなのか、そうでないのかとあれこれ考え続けていたのである。量子論なんかはもう複素数がベースとなって計算している訳だし。
SF的にも、世界の一部分しか目に見えないというのは面白そうだった。つまり、この世界は複素数で出来ているが、そのうちの実数部分しか人間には知覚できないという考えである。
複素数が実数の上位互換なら、もう全部複素数を使えばいいじゃないかと考えてもおかしくない。
というあたりで、複素数は実数の上位互換ではない。ということが分かった。実数は体で、複素数は代数閉体なのだが、その一方で、実数は順序体だが、複素数は順序体ではないのである。つまり、実数では成り立つ(よい)性質が複素数では成り立たないのだ。(複素数で不等式が成り立たないのは知っていたが、順序体という概念を知らなかったので頭の中で整理できていなかった)
実数では1次不等式が解けるが、複素数では1次不等式が解けないのである。体というのは1次方程式が解ける世界なので、実数は1次方程式も1次不等式も解けるという素晴らしい性質を持っているのだ。
これこそが、実数の複素数に対する優位性であり、この世界はやはり実数で出来ていると個人的に納得できたのである。
虚数が架空の数だから実数が優れているのではなく、複素数では不等式が解けないからその点においては実数が優れているのだ。
距離関数も絶対値も実数でないと不等式が使えなくて困ることになる。不等式を使えないと、数列の収束も関数の連続も証明できないではないか。
なのだが、次の俺の個人的な疑問は、この世界は実数ではなくて有理数で出来ているのではないかということであった。有理数も順序体だし。人間のするすべての計算は有理数の範囲で打ち切られているわけで、コンピュータの中での計算も有限の数で、浮動小数点数も有理数の一部を表現しているとも考えられるからである。
だいたい、実数の定義がめんどくせーのよ。数直線という非常に分かりやすそうなものがあるのに。
実際には、その場その場、個々の問題に応じて、理論的に扱いやすくかつ計算しやすいようにモデル化する手法として数学を使えばよく、現実がどうとかいうことではないと考えるべきだと思うのである。