どこが創作なのかという問題があるこの異世物語だが、小説によくあるのは作者がコメントを入れること。
さて、エンタメの中で一大ジャンルをなしているのが妹ものである。これには義理の妹と実の妹の二種類があり、実の妹だと思ったら義理の妹だったというパターンもある。それ以上に重要なのが、一緒に育ったかどうか。義理の妹だけど一緒に育ったというパターンや、実の妹だけど分かれて育てられたというパターンがある。
しかし、平安朝風の世界では、母親が同じ妹か母親の違う妹かという点もまた重要である。このエピソードではその違いは明示されていない。なのでおそらくは異母妹であろう。
ある時、男が久しぶりに妹に会った。前に会った時はほんの子供だったのに、少し女らしくなってきた。そこで妹をからかって歌を詠んだ。
うら若み寝よげに見ゆる若草をひとの結ばむことをしぞ思ふ
うら若くてその上で寝ころんだら気持良さそうに見える若草、そんな風なおまえも、若草を結んで草枕にするようにやがて誰かとちぎり結ぶのだなと考えたりする。その誰かさんが少しうらやましいよ。
妹はそれを聞いて、こう返した。
初草のなどめづらしき言の葉ぞうらなくものを思ひけるかな
冬が終って初めて見る初草のように思いがけなく珍しい言葉ですこと。裏心などなく兄と思っていましたのに。
兄のからかいに動揺することなく、しっかり切り返している妹である。返歌の出来もそつがなく、それはつまり男女交際の準備が出来ているということであり、兄の言うように誰かとちぎり結ぶ日も近いということであろう。
