ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:真夜中の探偵

図書館で借りた本。

ミステリだと思って読み始めたら、なんかミステリじゃないっぽい、かと思ったらやっぱりミステリだったみたいな感じだった。

最初の方で日常の謎みたいなことがほんのちょっとあっただけで、なんと殺人事件が起こるのは(文庫版じゃなくてハードカバーで)349ページ中の184ページ目である。それまでサスペンスを盛り上げてついに殺人……という構成ではなく、主人公の空閑純の母親探しみたいな話で、その母親探しもまだ始まっていなくてだらだらしてるなぁと思ったら突然殺人事件が発生したのである。それまでの描写も事件に関係ない訳じゃないけど、事件発生までが長いよ。

 

 

これはなんとうか、現実の日本ではない架空の日本の話、つまり異世界の話だな。そしてこの異世界では探偵行為が禁止されている。これは言うならば、探偵が追放された追放系の話である。

この架空の日本という世界がどうも俺は好きになれなかった。北海道が北朝鮮を思わせる国になっていて、本州側もなんか全体主義っぽい感じの国になっている。でも特殊設定ミステリではないから、物理法則が違うわけではなく、政治的状況はトリックに影響がない。なんなのこの異世界は、作者の趣味なの?

探偵行為が禁止されているのは、探偵が犯人を(情で?)見逃したり、犯人隠匿をしたりするからというのだが、そこにはあまりリアリティがない。悪徳探偵の出来る悪行なんて悪徳警官のする悪行となんの違いもないのだから。探偵と警官には本質的な違いはなくて、探偵とは金を払えば被害届を受理してくれる警察のようなものだ。

ただ、俺には探偵行為を禁止するのは妥当だと思える。それは警察の悪行を探偵もするにしても、警察は公務員だが探偵はそうでないからである。つまり探偵には公務員賠償がない。これは冤罪で無実の人を犯人にしてしまった場合には大きな違いになる。そしてミステリの探偵たちときたら、実に冤罪をやらかしそうな連中ばかりなのである。その上、被疑者を追いつめて崖から落としたりするのだから、探偵行為を禁止するのは妥当である。