ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:マックス・ヴェーバーの犯罪

図書館で借りた本。面白い。

副題のー『倫理』論文における資料操作の詐術と「知的誠実性」の崩壊ーに書かれている『倫理』というのは、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』のことである。この本の中で『倫理』と言ったらそれのことである。

この本はマックス・ヴェーバー批判の本であるが、対象は『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』であり、他の著作は関係ない。「職業としての学問」がチラッと出てくるが、単にその中で言っている「知的誠実性」にヴェーバーが反しているというだけのことである。

「はじめに」の部分で「女房がこう言った」とかなんとか書いているので、「刑事コロンボかよ」と脳内でツッコミを入れたのであるが、第1章を読んでいたら、18ページで「くたびれたレインコートを着て無礼を承知で敢えてしつこく確かめる、刑事コロンボの如き」と書いてあったので、最初からそのつもりだったようである。

第1章の初めから、「犯行現場としての『倫理』論文」と書いてあるので、ミステリーを意識していることは間違いないだろう。

結論だけなら終章だけ読んでもいいし、ついでに4章の後半も読めばほぼマックス・ヴェーバーの犯行については分かる。けれども、ミステリの醍醐味というのは、探偵が犯人の巧みなトリックを暴いて行く過程にあるのだ。そして犯人がずる賢ければ、ずる賢いほど、それを見破る探偵の証拠集めと推理が面白くなるのであり、その点でマックス・ヴェーバーという犯人はミステリ小説の犯人として十分な資格がある。

エンタメとしては表現がやや硬いというか、もってまわった言い方をしていると思えるが、それすらも犯人であるマックス・ヴェーバーの言い方を探偵が真似しているという趣向とも考えられる。

犯人であるマックス・ヴェーバーを追いつめて行く著者の手腕はお見事であり、硬い表現にも拘わらずほぼ一気に読めた。4章の前半だけはちょっと重要性が分からなかったが、後半を読んだらやはりこれも必要だと分かった。

なお、面倒なので注釈は読まなかった。

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