図書館で借りた本。
フィンセント・ファン・ゴッホの弟で画商のテオドルスの話。
なのだが、これが歴史改変ものである。
歴史改変にもいろいろあるが、これはアカンヤツでしょう。二次創作におけるキャラ改変に相当する。つまり画家のゴッホのキャラが一般に知られているものとはまるで違うように改変されている。
歴史物のフィクションだから現実の歴史と違うことを描くのはありなんだが、歴史物の基本形としては、歴史資料のちょっとした記述から妄想を膨らませるとか、資料のない空白の期間について妄想を膨らませて描くとかいうのはよい、というか好ましい歴史フィクションである。ところが、この漫画は現実と違うところの根拠となる歴史資料がない(示されていない)。完全に作者の妄想である。
またテオドロスの画商としての営業能力によって画家ゴッホが有名になったというストーリー展開自体はよいとしても、それをやって、歴史改変までするなら、いっそのこと画家ゴッホには全然才能がなくて凡庸に過ぎないのに、テオドロスの天才的な商法によってあたかも画家ゴッホが天才であるかのように有名になったというくらいまで徹底してやったら、俺は評価するけど。そういう意味では中途半端である。情報を食べているんだ、絵を見ているんじゃなくて画家の背景ストーリーとしての情報を観賞しているんだというところまで行っていないのである。
まあ、俺は現実に存在した人間を改変してエンタメ消費するのはあまり好きじゃないからね。特に明治の文豪が異能力バトルしたりするのとか。一方、信長が魔王なのは歴史資料があるので、ありだと思う。アーサー王はもともと9割以上フィクションだから、これもありか。