どこかの大事に育てられた箱入り娘が、このおたく男のことを知って、なんとか男と話がしたいと思った。たぶんおたくトークがしたかったのであろう。けれども箱入り娘なのでそれを言い出すことが出来なかった。そして病気になってしまった。もう死ぬという時になって、実はおたく男と話がしたかったとようやく言った。それを親が聞いて、泣きながらおたく男に告げたので男は慌ててやって来たが、娘は死んでしまった。
おたく男はしみじみと喪に服していた。水無月の末でとても暑い季節である。日が暮れた後は音楽を演奏して弔っていたが、夜が更けてくると涼しい風が吹いた。蛍が風に乗って高く舞い上がった。おたく男はそれを横になって見ながら歌を詠んだ。
ゆく螢雲のうへまでいぬべくは秋風吹くと雁につげこせ
上に行く螢よ、雲の上まで行くならば、秋風が吹いて秋のアニメが始まるから戻っておいでと、雁に伝言を伝えておくれ。
螢から雁、雁から箱入り娘の魂へと伝言が伝わって、魂が戻り、娘は生き返った。
しかし、まだ夏であり、この世界にはアニメ放送もないので娘は騙されたことに気付いた。
なかなか日が暮れて暗くならない夏の長い一日をずっと二人でおたくトークして過ごしたが、ふと我に返るとエンタメの少ないこの世界が悲しくなってくる。
改変を試みたが、無理があったな。