ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:世界の三猿

図書館で借りた本。

見ざる、言わざる、聞かざるの三猿の土産物が世界中で売っていることから、三猿の起源は日本ではないかも知れないと著者は考えた。

 

 

庚申待あたりまでは面白かったが、アンコール遺跡に三猿の彫像があるというところで、これは面白いと思ったら、保存工事中で見学できないということで拍子抜け。

三猿は見ざる聞かざる言わざるという不見不聞不言を猿に語呂合わせしたところから日本起源というのは自然なように思われる。海外起源というには強い証拠が必要だろう。

もっとも、猿に限らずに、不見不聞不言という言葉だけを取り上げれば、これは世界一般に存在し得るし、いかにも尤もらしい格言になる。SNSやネットについてだって、見ざる聞かざる言わざるを心得るべきだ、なんてそれっぽく言えるし。

そして三猿ではなく四猿というのもあるらしい。しかも四番目は二種類あるという。不為、なさ猿というのがひとつで、何をなさざるのかというと、この猿は股間を押さえていて、つまりセックスをしないということらしい。これは庚申の日の夜にセックスすると出来た子供が泥棒になるという説と関係があるようだ。

もうひとつは、不思、おもわ猿というもので、胸に手を当てている。しかし、胸に手を当てて考えないのか、むしろ考えるんじゃないと俺は思う訳だが。

この著者は最初の方ではアフリカ起源をほのめかして、最後ではエジプト起源を主張しているが、アフリカ起源とエジプト起源ではかなり違うだろう。アジア起源と日本起源くらい違う。

書かれている話は面白いんだけど、著者は研究者ではないので調査能力が低い。土産物は証拠にならないと言いながら、海外の土産物ばかり買っている。三猿コレクターである。

海外の博物館に手紙を出して収蔵品に三猿がないか尋ねているが、だいたい返事がもらえないようだ。相手にされていないのだろう。

アンコール遺跡に三猿の像があるというのは面白そうだが、この本に載っているのは拓本の模写という二重間接証拠で信頼性は低い。アンコール遺跡は全体的に劣化がすごいようなので今後猿のポーズを判別できるか怪しいと思う。

ただ、三猿のポーズを人間もしているところは面白い。猿に拘らずに、元は人間のポーズでそれが日本に来て語呂合わせで猿になったという説だと、尤もらしさが上がると思うのだが、著者はそう主張してはいない

撮影不可だったので著者がスケッチしたというカイロの博物館の三猿(人)土偶も目を隠しているもの以外は何だか分からないし、もちろん著者の思い込みもあるだろうから証拠にはならない。