ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:ブラインドサイト

前に上巻だけ読んでちょっと書いたけど、下巻も読んだのでネタバレで感想を書く。

 

最大の不満は、ファーストコンタクトものと期待させておいて実は人間の意識がどーのこーのという話であること。確かに異星人(異星生物)の描写はあるけれど、全体の1%か2%くらいの割合ではないだろうか。

裏表紙には、「人類とはまったく異質な進化を遂げた存在」と書かれているけど、一種類の生物しか登場しないので進化の結果かどうかは分からない。登場人物がそう言っているだけ。俺は彼らが作られた存在である可能性はあると思った。

 

ad2217.hatenablog.comソラリスの海」みたいって上巻の感想では書いたけど、訳者あとがきでもソラリスに言及されていた。

そして上巻の感想で言及したチェーホフの銃だが、俺はこの作品における吸血鬼の存在がチェーホフの銃だと思ったのである。人類から分岐して進化した存在としての吸血鬼という設定だけなら、吸血鬼もののSFとして問題はないけれど、異星種族との接触に吸血鬼が出てくる以上、そこには意味があるはずである。俺は、吸血鬼種族は、異星種族が人類を遺伝子改変して作り上げた種族だったという話になるかと思ったのだ。

それだと異星種族ははるか昔に地球に来ていたことになるけれど、作中の描写と矛盾しない。この作品の異星種族は突然存在を明らかにしただけであって、突然飛来したとは描写されていないからである。

下巻の描写でも、異星種族は人類の盲点をついて行動できるとあるが、人類の盲点をついて行動するには、人類の生理機能について詳しく知っている必要があるし、知った上で自身の機能をそれに合わせて調整する必要があるだろう。作中では(MRIみたいに)磁気によって人体の仕組みを知ったという推測がなされているが、太古の地球に来ていて人体の仕組みを調べていた、そして長い時間をかけて彼らの機能を調整したと考えてもいいはずだ。

なにしろ、この作品の描写は一人称と主人公が聞いた仲間の台詞が主体なので、事実だとは限らず、俺の推測の方が合っているという可能性もあるのだ。

だから上巻を読んだ時点での俺の推測は、最後に吸血鬼が裏切って異星種族側につくというもの。異星種族が吸血鬼を作った理由は、人類の文化とかを調べるため。(生理機構については既に知っているので)

しかし、そんな結果にはならなかった。

しかし、この作品がファーストコンタクトものではなく、人類の意識がどーのこーのという作品であるという正にそのことによって、この作品はファーストコンタクトものとしての(俺の知っている限り)新しいパターンとなっているのである。

異星人が来たけど、人類に興味はなかった、または気付きもしなかったというファーストコンタクトものは、既にあるのだ。これはその逆である。異星人が来たけど、人類は異星人に興味がなかった、それよりも自分たちの意識がどーのこーのということにばかり関心を持っていた。

これはいいね。多分作者はそんなこと考えていないだろうから、そういう見方を発見したオレがエライ

主人公たちのチームを派遣しているのだから、異星人に関心あるだろうという反論があるかも知れないが、このチーム派遣はなんだか御座なりな対応という気がする。異星人が存在を示した以上は政治的になんらかの反応をする必要があるので形だけ対応したということではないだろうか。だって、物語の最後において異星種族との接触は人類の未来に何の影響も与えていないのだから。