おたく男が昔好きだったけれどもう会えないと思っていた女がいた。その人が天皇と結婚して子供が産まれ、その子が幼いながらも皇太子になって、春に桜が咲いたので桜を愛でつつ皇太子の長寿を願う宴が開かれた。
意外なことだが、おたく男もその宴に招かれたのである。そこで詠んだ歌。
花にあかぬ嘆きいつもせしかども今日のこよひに似るときはなし
すぐに散ってしまう桜の花だと分かっていても、いつまでも飽きずに眺めていたいというむなしい気持ちは、桜の花を見る度にしていましたが、今日の夜のように強く思ったことはありません。昔好きだった人が他の人と結婚してしまっても好きという気持ちはなくならないその悲しさを今宵はあらためて強く感じました。